ゆび

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なんだったんだろう。 そう思いながら、沢山さんが行ってしまってからも、しばらく私は自分の手を見ていた。 「どうかした?」 「え?」 見るとパートの笹倉さんが怪訝そうな顔で立っていた。 「いや、じっと手を見てたから。怪我でもしたのかと思って」 「いえ、なんでもないです」 「もしかして沢山さんに何か言われたとか?」 「え?」 「いや、さっき沢山さんと話してたから。あの人厳しいから何か注意でもされたんじゃないかと思って」 「厳しいんですか?」 「そりゃそうよ。私なんかあの人に話しかけられたら、何か注意されるんじゃないかって緊張するもの」 「あはは。確かに沢山さんてそんな雰囲気もってますもんね。でも何も言われてないです」 「そう、それならいいんだけど。でも理沙ちゃんは若いし、それに七海(ななみ)さんの娘さんだから大丈夫ね」 「はい。私、元気だけがとりえですから」 指がきれい。ただそう言われただけなのに。 仕事をしていてもつい指を見てしまい、あの人の顔が浮かんでくる。 沢村さんって、何歳なんだろう...
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