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◯
彼と別れたその足で、私は再び屋上へと上がった。
ふらふらとフェンスに歩み寄り、手にしたメモをそっと胸の前で開く。
『土曜日のデートは、結衣が高熱を出してキャンセルになりますように』
すでに書き込まれた私の字。
それを最後に確認してから、改めてフェンスに括り付ける。
「そこで何やってんの?」
と、不意にすぐ後ろから声をかけられて、私は凍りついた。
聞き慣れた声。
恐る恐る後ろを振り返ってみると、そこには声から予想した通り、クラスメイトの結衣が立っていた。
まさかとは思うが、あとをつけられていたのだろうか。
一体いつから。
「そのメモ、渡しなよ」
言い終えるが早いか、彼女は私の手からそのメモを乱暴に奪い取った。
「……ふうん。いい度胸じゃん。私のこと邪魔する気満々だね」
メモの文字を見るなり、彼女は低い声で吐き捨てるように言った。
「あんたがここでコソコソしてんの、いつもグラウンドの方から丸見えだったよ。最初の頃は何してんのかわからなかったけど、ここに結ばれてるメモを読んでよーくわかったわ。叶くんが自分以外の誰かとくっつくのが相当嫌だったんだね。わかるよ。私も同じ気持ちだもん」
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