おまじないの神様

10/14
前へ
/14ページ
次へ
         ◯  彼と別れたその足で、私は再び屋上へと上がった。  ふらふらとフェンスに歩み寄り、手にしたメモをそっと胸の前で開く。 『土曜日のデートは、結衣が高熱を出してキャンセルになりますように』  すでに書き込まれた私の字。  それを最後に確認してから、改めてフェンスに括り付ける。 「そこで何やってんの?」  と、不意にすぐ後ろから声をかけられて、私は凍りついた。  聞き慣れた声。  恐る恐る後ろを振り返ってみると、そこには声から予想した通り、クラスメイトの結衣が立っていた。  まさかとは思うが、あとをつけられていたのだろうか。  一体いつから。 「そのメモ、渡しなよ」  言い終えるが早いか、彼女は私の手からそのメモを乱暴に奪い取った。 「……ふうん。いい度胸じゃん。私のこと邪魔する気満々だね」  メモの文字を見るなり、彼女は低い声で吐き捨てるように言った。 「あんたがここでコソコソしてんの、いつもグラウンドの方から丸見えだったよ。最初の頃は何してんのかわからなかったけど、ここに結ばれてるメモを読んでよーくわかったわ。叶くんが自分以外の誰かとくっつくのが相当嫌だったんだね。わかるよ。私も同じ気持ちだもん」  
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加