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「……そうだ。おまじないをしてあげようか」
カフェを後にして、ビルの建ち並ぶ歩道を二人で歩いていると、彼は思い出したようにそんなことを言った。
「おまじない?」
「うん。俺さ、昔から人の願いを叶える能力があるんだよね」
唐突に彼が口にした内容は、普通なら笑い飛ばしてしまいそうなものだったけれど、
「人の願いを、叶える……?」
今の私にとっては、とても笑える冗談として受け流すことはできなかった。
「へへ。信じてないでしょ? でも本当なんだよ。俺がこうやって胸の前で手を組んで、ぎゅーってやりながら、神様お願い! って唱えると、周りにいる誰かの願いが叶うんだよ。ほら、こんな感じ。……神様お願い!」
そう言って胸の前で両手を組む彼は、無邪気で、幸せそうで、この世の穢れを一切知らないような、まるで純粋な幼子のようだった。
もしも、この世には本当に神様がいて、誰かの願いを叶えてくれるのだとしたら。
その対象は私のような穢れた心の持ち主ではなく、彼のような人間ではないだろうか。
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