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彼女たちの言う通り、佐々木先輩はお嬢様すぎるが故に、私たち下々の者とは無縁の生活を送っているような人だった。
美人でお淑やかで、男子からも人気があるけれど、習い事などで忙しいのか、周りの生徒と深い付き合いをしているところは見たことがない。
そんな彼女が一体どうやって、学年も違う叶くんとコンタクトを取ったのだろう。
「二人はもう付き合ってるの?」
「ううん、まだみたい。初デートだって」
「なぁんだ、よかった。……でも、佐々木先輩がもし告白でもしたら、叶くんはOKしちゃうのかなぁ」
憂鬱な未来がぼんやりと頭に浮かぶ。
そりゃあ、あんな綺麗な人に交際を申し込まれたら断る選択肢はない。
そう、普通の男子ならば。
「でも……——」
私は一縷の望みにかけて言う。
「でもさ、相手はあの叶くんだよ。いくら佐々木先輩でも、絶対ってことはないんじゃないかな。それにほら、当日は台風でデートがキャンセルになるかもしれないし、どちらかが風邪をひいて行けなくなることだってあるかも」
「そんなの、また日を改めて行けばいいだけでしょ。ずーっと台風だの風邪だのが続くわけじゃないんだから」
「ずーっと続く可能性だってあるかも」
そんなことがあるはずはないと頭ではわかりつつも私が言うと、
「なに。めちゃくちゃ必死じゃん、あんた」
半ば呆れた顔で、結衣に言われてしまった。
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