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当日は記録的な大雨が降りますように——と、ドス黒い願いを書いたメモを持って、私は校舎の屋上へと上がった。
広々とした屋上のフェンスには、所々に折り畳まれた紙が結んである。
ちょうど神社でおみくじを結んでいるのと同じような状態だった。
この高校に伝わる、おまじないの一種だ。
紙に願いを書いて、それをこのフェンスに結ぶと、神様がそれを叶えてくれるという言い伝え。
もちろん、本気で信じているわけじゃない。
こんなことで全ての願いが叶うなら、今頃はこの高校の女子生徒はみんな叶くんと付き合っているはずだ。
(でも、願うだけならタダなんだし……)
このまま何もしないよりは、神様に縋ってみたいと思うことだってある。
ダメで元々、叶えば儲け物。
どうせなら叶って欲しいな、と思いながら紙を結んでいると、フェンス越しに見えたグラウンドの真ん中に、見覚えのある姿があった。
叶くんだ。
サッカー部に所属する彼は、こうして放課後には毎日グラウンドでサッカーの練習をしている。
コートの周りでは女子のギャラリーができていて、黄色い声があちこちから上がっていた。
いつだって人気者の彼。
私には到底手の届かない存在。
願わくば、誰の色にも染まらず、いつまでも孤高の人でいてほしい。
そんな身勝手な思いを抱えながら、私はひとり屋上を後にした。
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