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高槻さんと僕は、同じ大学に通う先輩と後輩だった。というか、元々は高校からの付き合いだ。
同じカードゲーム同好会に入っており、入部当初から親しい間柄だった彼。高槻さんと同じ大学に合格できたはいいものの、東京は遠い。ついでに家賃がバカ高い。住む家がなかなか見つからなくて途方に暮れていたところ、高槻さんの方が“俺んち来るか?”とルームシェアを持ちかけてくれたのである。
安いワンルーム。バイトをしながら彼と家賃や光熱費を折半すれば、十分暮らすことは可能。僕からすれば、願ってもない申し出だった。
問題があるとすれば一つ。
『あの、男同士でルームシェアってすると、何やらいろいろ言われたり……下手すると大家さんに拒否られたりしそうなんですけど、そのへん大丈夫ですか?』
これ。
実際は友達同士でルームシェアをすることだって珍しくないとは思うのだが、殊に男同士となると妙な偏見が付きまとうのは避けられない。
高槻さんは親元を離れて暮らしてはいるものの、実際かなり良いところのおぼっちゃんだとも知っている。両親が知ったらいい顔しないだろう。心配になってそう尋ねれば、彼は“何もやましいことなんかないからいいんだよ”と笑って返してくれた。
『俺ら大学の先輩と後輩じゃん。先輩が後輩の面倒見てるってダケ。何をそんな不安がる必要があんだよ』
彼は、何も間違ったことは言っていない。
それなのに僕はその言葉で、半分安堵して――残る半分で、ちょっとだけショックを受けたのだった。
実際のところ、僕は彼を“そういう意味”で好きだったから。彼もきっと、それがわかっていないわけではなかっただろう。そもそも、彼と親しくなった最初のきっかけは、僕達がどっちも同じ悩みを抱えた者同士だったからである。
合コンだの、ナンパだの、エッチな雑誌だの下ネタだの。
仲間内でそういう話が出るたび、胸がちくちくして仕方なかった。――僕は女の子にてんで興味が持てなかったから。それは、彼も抱えていた痛みだったのだろう。
唯一の違いは、彼はその気になれば女の子ともお付き合いができたということ。高校三年生の時点ですでに八人くらい彼女と付き合ったことがあるという話を聞いている。彼はイケメンだし、人当りもいいから女性達もほっとかなかったのだろう。幸か不幸か、長続きはしなかったようだが。
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