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「言おうかどうか、迷ってる言葉があるんだ。なあ、僕、言っていいのかな、高槻さんに。……これからもよろしく、って」
「?」
意味がわからん、と姉の顔に大書きされる。まあそりゃそうだろう。自分でも、支離滅裂な説明しかできていないという自覚がある。
「高槻さん、両親から言われてるみたいなんだよね。早く結婚しなさい、みたいに。……そりゃ、高槻さん結構な女性遍歴あるし。両親にも“女の人と結婚しようと思えばできる人だろう”って思われてるってのも想像がつくし。実際、高槻さんめっちゃくちゃモテるし」
「まあ、イケメンよね。写真見せてもらったけど」
「だろ?でさ。結婚ってマジで考えるなら……いつまでも僕と、ルームシェアとかしてたらダメ、じゃん?で、高槻さんもいつまで僕を部屋に入れてくれてるつもりなのか全然わかんないっていうか。ひょっとしたら、もうすぐ部屋から僕を追い出す予定かもしれない、じゃん?もしそうなら……これからもよろしくって言われたら、それだけで負担になりそうだなって……」
段々と、自分で言っていて空しくなってくる。もし、僕に高槻さんと同じくらいのかっこいい顔があったら。頭が良いとか特別な資格があるとか誰にも負けない技能があるとか――何か自信を持てるところがあったなら。
せめてもう少し早く、彼に真意を聞き出すこともできたのかもしれないが。
「えっと……」
みのりは困ったように頬を掻いた。
「訊きたいんだけども。……大前提として、あんたら付き合ってる、のよね?」
「……たぶん」
「多分かい!え、告白するとか付き合ってくださいとかそういうのなかったわけ!?」
「い、いや!一応言ったよ、言った!先輩が好きですってちゃんと伝えたよ!で、先輩も“じゃあ付き合うかー”みたいなかんじで。ルームシェア始めてすぐの頃に」
「じゃあ一応付き合ってて、つーか同棲してることにもなってんじゃん。で、別れてくださいなんて言われてないんでしょ?なんでそんな弱気?」
「で、でも先輩女の人とも付き合える人だし!今まで最長三か月とか言ってたんだよ!?俺みたいな地味男に、こう二年も付き合ってくれてるとかある!?ないだろ!?」
「……高槻サンによくわからん負の信頼があるっつーのはよくわかったわ」
呆れた、と彼女は天を仰いだ。
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