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これってチートだよね
『シアンへ
体調はどうだい?
お母さんと心配しているけど、僕らが顔を見せると守って貰っているのに良くないからね。
生まれてくる子を楽しみにしているよ。
父、母より』
最近は両親からの手紙に嬉しくなったり、会いたくて涙が出たりと、感情の起伏が激しくなる頃にギルバルディが屋敷の中にゲートを作るようにしたらどうかと提案してくれた。
「ゲートって個人的に作っても良いんですか?」
「緊急性がある場合とは言われているが、法的に規制はない。
寧ろゲートは一介の魔法使いでは数人がいないと出来ないからな」
そう言えば最初にゲートから来た時、何人もの魔法使いが同行していたっけ。
「僕なら、一人でも出来るとお考えなんですね?」
「そうだ」
自信たっぷりにギルバルディが笑った。
この数カ月、付きっきりと言って良いほど僕を指導してくれていた。
「やってみます」
ゲートのイメージとは言え、魔法陣とかそんなのは出来ないので。
だって漫画とかの魔法陣って誰が描いてるの?ってくらいすっごくカッコいい文字だったり、模様だったりでそんなの思い浮かぶわけなかった。
そして、ド定番! 出来あがったのは扉だけ。
そう! まさにアレ!
テレッテレ~♪ なアレです。
「は? 扉?」
「はい、扉です」
カチャ。
扉の向こうでは、僕の両親が仕事に励んでいた。
「父さん! 母さん!」
「え、シアン?!」
ビックリした表情の両親に駆け寄って抱きしめると、母さんはもう会えないかもと思っていたって泣き出した。
「成功したが、これはまた、面白いと言うか、モノを作りだしたのか」
後ろからギルバルディが付いて来ながら、しげしげと扉を確認していた。
「そうだ、二人の仕事場とここを繋げちゃえば良いんだ」
部屋のど真ん中にこんな扉を作るんだったら、部屋の扉で行先を決められるようにしたら良いんだ。
あの動く城みたいに。
それからは僕のやりたい放題の魔法を発揮した。
だってやりたい事だったんだし。
これぞ異世界転生のチートでしょ!
「シアンは随分性格が変わったな。
小さい頃は引っ込み思案で、いつでも自信が無かったのに」
どちらかと言うと、暗い奴だった。
僻んだことは無いけど、魔法を簡単に使っている両親やベオクを見ると、羨ましいって気持ちと憧れって言う気持ちがごちゃ混ぜになってた感は確かにあった。
だからって引きこもりとかそう言うつもりも無かったし、前世の記憶を使って色々出来たのも良かったと思ってる。
「うん、だって魔力が無いって思ってたから。
他の人達みたいに、魔道具すら使えなかったし、ね。
それに、この子の為にも僕は胸を張って、魔法使いだって言えるようにならないと」
膨らんだお腹をそっとさすった。
前世持ちで、チートがあって、オタクだもん。
しかも腐男子のオタクだから、この世界は僕にとって素晴らしい世界へと変貌したんだから。
小さい頃の絶望とか、裏切られた男への復讐とか色々あるけど、先ずは自分が自信を持てることが大事だってギルバルディとカサルから教わった。
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