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雑談と言う名の……？
まだ臨月と言うには早い時期に、大きくなったお腹を抱えて皇帝の謁見室で雑談をする羽目になっていた。
これまで何度もお茶に呼ばれ、食事に呼ばれと招待は受けていたけど、全ては体調が悪い、で断っていた。
皇族に対して本来は不敬だなんだと言われるけど、妊夫と言う免罪符があった。
でも、今回ばかりはギルバルディからも行くようにと厳命されてしまった。
庇護下に入ると決まってる以上は、仕方ない事だと。
「ラキュー殿、あれから随分変わったようだな」
僕をじっくり眺めてから、感心したようにそう言われた。
赤光色の髪が、少し金色が混じるようになって、顔つきも妊娠で大分変ったように思えた。
「皇帝陛下、魔法を使う事で自分自身を見直したのと、子が育って来て体型も変わりましたから」
「うむ、聞いておるぞ。
ラキュー殿は最近まで魔法が使えなかったとか」
皇帝は僕の話に興味津々と言った感じで、身を乗り出すように聞いていた。
テーブルを挟んで、向かい側に座る皇帝、その隣に皇妃、そして僕の右隣になぜか第四王子がが座っていた。
「ねぇ、ラキュー殿、ラグランジュは好みではないかしら？」
扇を口元にあて、ほほ、と小さく笑いながら恐ろしい事を聞かれた。
第四王子ラグランジュは僕より五歳ほど年上だと聞いていたけど、その姿はさすが皇室と言った気品に満ちていて、とても二十代とは思えなかった。
それに王族って整形でもしてるのかってくらい、美形ぞろいで余りのキラキラさに溶けてしまいそうだった。
金髪に僕と同じ碧の瞳が、なんだか申し訳ない気持ちにさせた。
「皇妃様、私の好みを聞かれても……。
それに第四王子様は素晴らしい方で、芸術品の様です」
「あら、ラグランジュ、振られたみたいよ？」
皇妃は面白そうに笑いながら第四王子に向かって言うと、それを本人が否定した。
「母上、ラキュー殿は褒めて下さったのですよ」
「何を言うの、芸術品の様に眺めるだけで十分、と言う意味じゃない」
「いえいえ、この造形美を褒められたのです、次は実際に触れ合えばもっと褒めて頂けますよ」
何の応戦になってるんだろう。
「ラキュー殿、私は範疇外ですか？」
第四王子が僕の手を握って、更に恐ろしい事を恐ろしい美貌と肉体美を持って聞いてきた。
「あ、の、私は、未婚の母になりますので、範疇外も何も論外かと！！」
勇気を振り絞って、はっきりと断った、つもり。
「私はね、叙爵式の時のラキュー殿に一目惚れしたんだ。
君の強さにね」
「は？」
あの場に第四王子がいた事すら気づいてなかった僕は、隠すことなく『何言ってんだ？こいつ』って表情をしてしまった。
「ふふふ、そういう表情も良いね。
私が見たのは自分だけの子だってしっかり押し通していた所だよ。
今までの叙爵を受ける人たちはそれなりにちゃんと喜んでるし、貴族になる事で受ける恩恵に期待をするから、自分にとって不利な事は切り捨てる方だけど、ラキュー殿は子が枷になるなら爵位なんてどうでも良いという感じだった」
「まぁ、そうですね。
元々、自分の力で生きて行こうと思ってましたから」
「金色の魔法使いって言うのはどうでも良いけど、エルモア殿が私の隣で笑ってくれないかって思ったんだ」
いつの間にか名前を呼ぶ第四王子がうっとりするほどの笑顔と、真摯なまなざしで僕を見た。
「私は、婚前交渉をして身ごもりました」
「うん、だから？」
「この子は第四王子様には縁もゆかりもない」
「君が母になるのに、縁が無い？」
少し怒ったような口調になった。
「金色の魔法使いとして、皇帝陛下や、皇室に尽くすことを誓います」
次にですから、と言おうとしたところで第四王子に違うよ、と遮られた。
「ラキュー殿、わたくしも陛下も其方を隷属したいわけではないの。
確かに奇跡の様な存在だから、この国から出て行ってほしくは無いわ。
ただね、幸せになるなら、ここで幸せになるのはどうかしら？」
皇妃の言ってる事が頭の中で素通りして行った。
「私は役に立ちますよ、結婚を前提にお友達から始めませんか？」
「畏れ多い……」
これは雑談に呼ばれたのではなく、雑談と言う名のお見合いだったか。
「お友達のポジションは絶対譲れませんからね」
満面の笑顔で、お友達の前についていた不穏な言葉。
「ダメかい？」
今度は犬！
コテンと首を傾げて、あざと可愛く綺麗な男が！ 鼻血を出しそうだった。
「で、では、純粋に、お友達として」
折れるしかなかった。
「ありがとう！
絶対幸せにします！」
「いえ、そういうのはもう、ちょっと、うんざりなので」
第四王子は僕の手を取って、護りますから、といい笑顔で告げた。
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