自業自得

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自業自得

 それからの第四王子は暇さえあれば、僕の家に来るようになった。 「エルモア殿、胎教に良いと言われる音楽を集めてみました」  第四王子は魔法石に色々な音楽を記録させて、それを再生させたり手触りの良い寝具や、子供の為のおもちゃなんかを部屋いっぱいに用意したりと暴走気味だった。 「あの、第四王子」 「ラグランジュ! ですよ」 「ラグランジュ様、あまりこういった事は」 「ラグランジュです。  様はいりません。  もしくはグランでも良いです」  にこにこと名前を呼ばせようとするけど、それはいくら何でも無理だった。 「エルモア殿、私は貴方も、貴方の子も愛しいのだから」 「有難い事ですが……」  非常に困った。  こんな綺麗な人が、何を血迷ってるんだか。 「生まれてくるのが待ち遠しいです」  本心なのでは? と、信じたくなる自分もいた。  まるで信じちゃいけないように、嫌なところやダメなところを探そうとしたけど、彼が優しい良い人だと言うこと以外見つからなかった。  少しずつ絆されて行くのが分かった。  僕のダメなところだ。  そんな時に決定的な事件が起きた。  出征していたベオクが、負傷して退役を余儀なくされた、と言う話が両親からもたらされた。 「シアンに伝えるかどうか迷ったけど、ベオクは背中が傷ついて、腰から下がマヒしたそうだ。  この先、もう二度と子供は望めないそうだ」 「お父さん、ベオクには既に奥さんも子供もいるんだし」 「それが、生まれた子はベオクには似ても似つかない容姿だったそうだ。  金髪赤目のベオクに、領主の血筋は鳶色の髪に瞳なのに対し、生まれてきた子供は緑色の髪に黒い瞳だったそうだ」 「それって、ベオクの子供じゃなかったって事?」  お母さんが向こうの家の事情をお客さんから聞いたことで発覚した。 「さすがに、ね。  髪色が緑じゃあり得ないでしょ。  先方と揉めてるらしいから、自業自得でしょ」 「お母さんと私の気持ちは同じだ。  ベオク君は気の毒だと思うけど、私達にとってシアンを傷つけた事の方が何倍も許せないからね」 「うん、僕も。  正直に言えばざまぁみろって言う気持ちしかないんだ」 「だから、どんなに脅されようと、魔法管理部への橋渡しにシアンを使おうとするなんて、絶対に許さないから!」 「お母さん、それ、どう言う意味?」 「あのクソ親父、金色の魔法使い様にベオクを治療して貰いたいから、官僚のシアンから話しをして欲しいとか! 図々しいにもほどがある!  この街での仕事を干すとか、税金を払ってないと領主から帝都経理部に通報するとか!  捏造にもほどかある!」  僕程度の官僚なんかより、余程コネがあるはずなのに。  そんな話しをしている所に、第四王子とギルバルディとカサルがゲートから、いや、ドアから現れた。 「その話しで来た。  余りにも笑える話しだ。  負傷で退役ではなく、上官を陥れた罪で軍法会議にかけられる事が決まった。  更に、帝都経理部は橋渡しを却下した。  もちろん、魔法管理部は金色の魔法使いに害を成した者に鉄鎚はあるが、治癒など認めん!」 「ホント、アホやろ。  どのツラ下げてって思うわ。  しかも自分の子や無かったって、どんだけやねん」 「父上と母上からの伝言です。  『領主と商家如きが、皇室の庇護下にある魔法伯爵とその家族に危害を加えるなら、その場で処刑せよ』との事です。  大変にご立腹で、私に剣と魔法を使う許可を出して下さいました」 「ラグランジュ殿下、それは余程の事ですな」  ギルバルディが驚きを隠さずに、そんな事を言うとカサルが僕に耳打ちをした。 「第四王子さん、剣はソードマスターで魔力は白なんや  うちの室長よりちーっとばかし強いんですわ」  言葉通り、僕を護ろうとしてくれていた。  ベオクを笑う事は出来ないけど、自業自得と言う気持ちしかなかった。
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