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「自分も違うのによその生き物には長生きすれば神通力が宿ると思っていると?よもや人類は雨が自然現象だとご存知ないとか?」
「いえ、不思議な力で雨を降らせることができると本気で考える人はかなり稀です。とはいえ、あなたの姿はとても威厳がありますし、そう思う人の気持ちもわかりますよ」
「いや私、普段はこんな風に姿を見せたりしませんよ?磔にされたあなたがいたからびっくりして出てきてしまっただけで」
「それは失礼しました。ともあれ、人間以外の存在が人の言葉を喋るなんてまるで神通力です」
「これはただの学習の成果です。あなた方だって勉強次第でいろんな言語を話せるでしょう」
「うーん、そうですけど」
「それよりも村人ですよ。なぜ塩と酒を置けば私が雨を降らせてくれると思うんです?」
「かつてそういう成功体験があったんじゃないでしょうか。あの村は外部との接触を断つあまり、旧時代のまじないがまだ生きてるんです」
「あなた生贄ですもんねぇ」
「雨が降らないのはヨソモノを村に入れたせいだ!ヨソモノを龍神様に捧げよ!って。学者になって長いですし似たような村にもいくつか行きましたけど、あんなこと言われたの初めてです」
「それは怖かったでしょう」
「怖かったですね」
「すいません、私のせいで」
「いえ、怖かったけど、先も申し上げた通り、ラッキーだと多少、興奮もしたんです。これもフィールドワークの醍醐味かなって」
「醍醐味?」
「学者のサガですかね。研究対象を身をもって経験できる喜び」
「なるほどぉ」
龍が曖昧にうなずきました。
「あのう、あなたとお話しながら思い出したんですが、実は私、少しなら雨降らせられるかもしれない」
「ええ!?」
今度は男が驚きの声をあげました。
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