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夜のディナーデートなんていつぶりだろう?
隆とは同棲し始めて一年になるが、最近ではすっかり夜の外出が減って、まったりと家で過ごすことが増えていた。夜どこかに行くとしても、歩いて行ける居酒屋くらいだ。
だからなんだかソワソワした気持ちで落ち着かないのだが、それと同時にウキウキと浮かれて地に足がつかない感覚だ。
デート当日、同じ家から同じ場所へ行くことになるのだが、今日は待ち合わせをしようということになっている。そして、隆は他にも用事があるということで、先に家を出ていた。
私は、約束の時間までゆっくりと準備をする。
新調したネイビーの総レースのロング丈ワンピースに袖を通し、白のパンプスとシルバーのクラッチバッグを合わせた。ワンピースは七分袖で大人っぽいデザインなのが気に入っている。
そして、下着もおろしたてのものにした。
何を期待しているんだって思われるかもしれないけど、デートなんて久々だし、ちょっとでも気持ちを上げて行こうかなと。
そろそろ出た方がいいかな…
私は約束の場所へと向かった。
時折すれ違う人からチラチラっと視線を感じる気がする。
どこか変じゃないだろうか?と、少し不安になりながら、ショーウィンドウに映る自分を横目でチェックする。
サイドで三つ編みにしてまとめた髪は乱れていない、大丈夫。
スカートの裾がウエストにひっかかってお尻丸見えなんてこともない、大丈夫。
化粧は家を出てくる前に濃すぎないことを確認したから、大丈夫なはず…
それよりなにより、さっきからパンツの左側だけ食い込んでくるのが気になって仕方がない。
可愛い下着に限ってこうなんだから…
そんなことを思いながら歩いていたら、背後から男性に声をかけられた。
「ねぇ、お姉さん可愛いね…」
ーーーえ?私?
ドキッとしてかたまっていると、隆が満面の笑みで私の顔を覗き込んできた。
「俺とディナーしない?」
「…なんだ、隆か…びっくりした…」
「ナンパかと思った?俺で残念だったね」
どうやら隆は待ち合わせ前に床屋に行ったらしく、髪が短くなっていた。アップバングで決まっていて、なんだかいつもより爽やかで男らしい。
スーツ姿は見慣れているのに、今日はなんだかいつもよりかっこよく見えて胸が高鳴った。
「行こうか」
隆はそう言って私の手を取った。
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