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席に着くと、日が沈んだ後で、空の色が移り行くマジックアワーだった。
「わぁ…綺麗・・・」私は感嘆の声を上げた。
「本当、綺麗・・・天気よくて良かった」と、隆は嬉しそうに言った。
沈んだ日の光のオレンジと天空のコントラストが、だんだんと強くなって、星がポツリポツリと見えてくる。そして、市内のパノラマ夜景が煌めいている。
私はそんな景色にうっとりしながらも、まさか、もしかして…と、思わずにはいられなかった。
何の記念日でもない日に、こんなロマンチックな店でのディナー…
これは…プロポーズされるのでは?!
そう考えると、ここ一カ月の隆の様子がおかしかったということに合点がいく。隆のことだ、スマホでプロポーズの方法なんぞ検索してたのだろう。電話でコソコソしていたのは、大方店の予約といったところか。
なるほど、なるほど、だから髪の毛もビシッと決めて…
それで緊張であの手汗なんだ・・・
今も冷静を装っているけど、この料理だってきっと全然味わえてないんだろうな…
緊張のためか、口数の少ない隆が頑張って思い出話なんかし始めちゃって、一緒にいるこっちも何だかつられて緊張してくる。
そんな風に思いながらメイン料理に舌鼓を打っていると、隣の席から二十歳過ぎくらいの初々しいカップルがキャッキャと「ナイフとフォークどれ使うの?」と楽しそうに話しているのが聞こえてきた。そして「あぁ、私たちもあんな時あったね…」なんて話をして、チラリと若いカップルに目をやると、私は女の子のお腹のふくらみに気が付いた。
隆も同時に気が付いたようで、隆が「幸せそうな可愛い夫婦だね」と、目を細めて優しく笑った。
隆は優しい。
ちょっぴり頼りない所もあるけれど、ひねくれ者の可愛げのない私を受け止めてくれる。
隆…プロポーズ、もちろんYESだよ…
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