これからもふたりで

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 食事も終盤になり、そろそろデザートタイムのいい時間だ。  ホールスタッフが目で合図してきたので、俺は小さく頷いた。そして、スタッフは親指を立てて笑った。    ―――いよいよだ。    俺は、赤ワインをグイっと一気に呷った。  呼吸が荒くなるのを必死で抑えようと思ったら、鼻の穴が全開になりそうだ。それに、心臓がバクバクとビートを刻んでいる。  やばい、飲んでこればよかったかも…  きゅーしんきゅーしん♪  って、いやいや今そんなCMいらねーし…  あぁ、助けて…綾ー…  って、綾に助け求めてどうすんだよ…  うぉー・・・     もともと暗い照明がさらに少しだけ暗くなり、ムードの良いBGMが流れてきて、ホール内が少しザワついた。  そんな音も、俺の耳には遠くぼやけて聞こえる。水の中にいるみたいに、耳に膜が張っているみたいだ。  綾は「え?」と少し戸惑った様子で、俺の顔をじっと見つめている。  あぁ、あんまり見つめないで…  綾の席の奥の方から、スタッフが"Will you marry me?"と書かれたプレート付きのケーキを運んで来ようとする姿が見えた。  あれが、テーブルに来たら・・・  俺はポケットのに手を伸ばす。  ドクドクドクドク  眩暈がしそうだ・・・―――そう思った次の瞬間。  「サトミ!俺と結婚して元気な赤ちゃん産んでください!!!!!」  隣の若いカップルの彼氏が、彼女に指輪ケースを差し出している。  ―――えっ!?!?!?    ムード泥棒!!?とでも言うのだろうか。  嘘だろ…  俺はプツリと張りつめた緊張の糸が切れて、放心状態になった。  そんな魂の抜けかかった俺のことなどお構いなしに、彼女はボロボロ涙を流して「…はい、喜んで!」と彼の手を握った。  ホール中の客やスタッフが拍手喝采で二人を祝福する。  俺も半べそ状態で拍手し、二人を祝福した。  綾も感動で泣きそうになっているのを堪えているのか、口に手を当てつつ、二人に祝福の拍手を送っていた。そして、その奥でケーキを持ったスタッフが口をパクパクさせて一歩、また一歩と様子を伺いながらジリジリと近づいてくる。    こんな盛り上がりを見せている中、じゃあ俺っちも便乗して~…  って、そんなことできるかーい!  俺はスタッフに向かって首を横に振って、隣の席の方へ目配せで合図した。  スタッフは哀れみの表情を浮かべて、手でオッケーサインを出し、そのまま何食わぬ顔で隣の若いカップルの方へケーキを運んだ。  作戦失敗。  プランBへ…  なんて、プランBなんて用意しているわけないだろー!  どうすっかなぁ…    
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