太陽に吐息

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 梅雨が嫌いだ。雨のせいで電車で学校に行かないといけない。普段は大好きなロードバイクで通学してるけど、雨が降ったら地面が滑るから危ないし、合羽を着ていかないといけないから電車に乗る。別に合羽を着て行ってもいいけど、家から高校まで40分もかかるから合羽を着て濡れるくらいなら、大人しく安全な方で学校に行く。  事前に天気予報で雨が降ることは知っていたけど、やっぱり当日になって実は晴れていたなんてドッキリみたいになってくれないかなと若干の期待を持っている自分がいた。しんしんと降る雨に、小さな吐息の異音が混ざる。  紺色の折り畳み傘を差して、普段とは比べ物にならないくらいのスピードの遅さで駅に向かう。自転車なら一瞬なのに、歩いているせいで遠く感じた。しかも今日は蒸し暑さもあるから、尚更歩くのが億劫だ。そこでまた溜息が出る。本当に雨の日はいつもより溜息が多い。土日になったらスクリーンタイムが増加するような増加率だ。  傘を畳んで、久々にICカードを改札に翳す。ピッと聞きなれない音が聞こえる。人の波に乗ってホームまで行き、電車を待った。いつもは自転車越しに見ていた電車が、間近にやって来る。  電車が開いた。数人が降りたが、ほとんどがスムーズに降りれるように外に出た人たちで、結局ぎゅうぎゅう詰めだ。俺は鞄を前に背負って、なるべく場所を取らないように鞄を潰す。それでも車両は酸素が無くなるのではないかと思うほどに満員だ。  扉が一度開いてから閉まる。外で駅員が「スムーズな乗り降りのご協力ありがとうございます」と礼を述べていた。朝早くからはきはきとした声で仕事をしていて、大変だなと思った。
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