太陽に吐息

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 俺たちは電車が来るまでベンチに座って駄弁り、やってきた電車に乗った。それから数駅して俺は最寄り駅に着いた。彼女はまだ先まで乗っていないといけないため、そこで別れた。電車を降りた時に彼女が笑顔を浮かべて手を振ってくれた。自然と俺も手を振り返す。初対面なのに初対面じゃないみたいな距離感に、ちょっと胸が湧きたった。  踵を返して改札に向かう。外に出ると若干弱まった雨が俺の前に現れた。折り畳み傘を差す。雨を弾く音が聞こえる。彼女が好きと言ったのに、この音も含まれているだろうか。  赤信号で捕まる。俺は目を瞑ってみた。ポンポンっ、と弾く音が鮮明に聞こえる。確かに良い音だ。別に音楽をやっていた訳じゃないけど、何だか好きな音だと直感した。  しばらく歩いていると、校舎が見えてきた。いつもは賑わっている校舎も校門が閉まっている為、しんと静まっている。雨音も弱まっている為、余計静かに感じた。  校門の前まで来て足を止める。さて、どうやって入ろうか。  ピタッと何かが止まった気がした。俺は傘から手を出して、雨を探す。雨粒はどこにも見当たらない。傘を閉じて、今度は全身で雨を探した。無論、雨粒は感じられない。雨が止んだのだ。空を見上げると、雲の隙間から若干の日光が見られる。うっすらと顔を出した太陽に俺は。 「ん?」  何かを疑問に思って、俺は声を出す。でもその何かが分からなくて、首を捻った。折り畳み傘を綺麗に畳み、鞄に仕舞った。
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