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「また一緒に踊ることはできますか?」
「うーん、そうだなあ。僕らは雨の予兆があるときに自然と集まるゲリラ豪雨みたいなものだからね。君の心にまた雨が降ることがあれば、気まぐれに現れるかもしれない」
「びしょびしょになっちゃったけど、こんなに雨に濡れるのが楽しいなんて感じたのは初めて」
「雨は人の想いに寄り添う涙みたいなものだから。悲し雨、嬉し雨、どう感じるかは人次第。僕らはそれを楽し雨として感じてもらえるように踊り続ける」
「まるで雨の気持ちを代弁しているみたいですね」
「そう、僕らのチーム名は『レインダンサーズ』。雨と共に心の澱みを洗い流し、新たな幸せを掴んでほしいと願っている。それが……僕らにとっても救いになる」
私は会釈をすると元来た遊歩道に戻り、バレエの姿勢を思い出して背筋を伸ばし、意気揚々と家路につくことにした。
彼らのことが名残惜しく振り返ってみると、ほのかな光がふわふわと浮いているだけで、レインダンサーズの姿はもう見えなくなっていた。
こんな日にふとした奇跡に出会えたことで、雨のことが少しだけ好きになった。
もう迷わない、無謀かもしれないけど私はバレリーナを目指して、芸術大学に進学することを決めた。
両親も強い想いがあることがわかれば、きっと応援してくれるはず。
翌日、もう一度代々木公園の広場を訪れてみた。
これからのことを報告したくて。
もちろん彼らはいなかった、今日みたいな青天が広がる日にいるはずもない。
でも大きな水溜まりを見つけた。
その水溜まりの上を思い切りジャンプして、グランパドシャを決めると、水鏡の向こう側で青空を舞う、もう一人のダンサーの姿をちらりと見た気がした。
昨日のことは幻だったのかしら。
ううん、きっとまた会える日が来る。
その日まで教わったレインダンスを練習しておこう。
雨よ降れ。
そしていつか、私もなってみせる。
誰かの心の雨を太陽で照らすレインダンサーに。
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