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びしょ濡れになりながら、ダンスを踊る若者たち。
なんというジャンルなのかわからないけど、その動きはとにかく楽しそうで、照らされたライトのせいかもしれないけど、そこだけ雨のカーテンに虹色の光彩が反射していた。
濡れた長髪を揺らし、思い切り両手を振り上げると、全身から噴水のように水珠が乱舞する。リズミカルなステップは地面に弾ける雨粒のよう。
中央で踊っていた青年と目が合う。にこりと微笑むそのあどけなさに、私は思わず顔を伏せた。
色とりどりの傘を持ったダンサーが彼の周りで踊り出す。クルクルと傘を回しながら、交互に入れ替わる様はまるで万華鏡。
中央で踊っていた青年が前に出ると、こっちにステップを踏みながら向かってくる。
私の前に立つと満面の笑みを浮かべながら、手を差し伸べてきた。
呆気に取られていると、彼の顔が目と鼻の先まで近づいてきて、前髪から落ちる雫が涙みたいにポタポタと私の袖口に垂れた。
「一緒に踊りませんか」
ぐいっと手を引っ張られて、ダンサー達の輪に私は連れていかれる。
どうしていいかわからず、呆然と立ち尽くしていると、「傘を左右に振ってみて」と声をかけられる。
遠慮気味に傘を右に左に振ってみると、魔法にかけられたようにダンサーたちが踊りながら左右に揺れた。
少し面白くなった私は、今度は見よう見真似でみんなの足取りを演じてみる。
みんなは一瞬驚きの表情をしたけど、嬉しそうに微笑んでくれた。
これでも少しだけダンスには自信があるんだ。
体が暖まり、調子に乗ってピケターンを披露する。つま先立ちになり、小走りしながら弧を描くように三回転してみる。路面に三つの波紋が広がった。
ダンサーからヒュウと口笛が鳴り、周りから歓声が聞こえてくる。
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