青天のRain Dance

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 そう言われても、ロックダンスなんてやったことがない。この場面に合う私が知っている踊りと言えば——  かかとを上げてルルベの姿勢を取ると、勢いをつけて回転を始めた。 『白鳥の湖』の名場面、黒鳥のグランフェッテ。  練習で挑戦してみたことはあるけれど、いつも途中で体勢を崩してばかりだった。  でもなんだろう、傘の内側に熱気が渦巻いているみたいでフワフワと体が軽い。  三十二回転、最後まで回ってみようかな。    軸足をぶらさないようにして、右足をルティレにして右回転する。  集中を切らさず、視点を一定に保つ。    ああ、さっきまで重苦しいはずだった雨が、私を覆ってくれるコスチュームのように華やいで見える。  そして三十二回転最後まで回り切り、息を切らしてよろめいた瞬間、私の体を青年が支えてくれた。 「君の心に太陽は戻ってきたかい?」 「はい、自分の本当にやりたかったことを思い出しました」 「よし、ラストだ。スプラッシュキックウォークで締め括ろう。思い切り水溜りを蹴り上げて、鬱憤を晴らしてみよう」  ダンサー全員が散らばると、音楽に合わせて思い思いの足取りで水を踏みつける。互いに水がかかろうとお構いなしで、楽しそう。  最後にみんなで蹴り上げた水飛沫は津波のように高く舞い上がり、その波が路面にザバッと落ちると音楽は鳴り止み、一斉にお辞儀をした。  青年が私に手を添えてくれたので、無意識に両足を曲げ、バレエ流のお辞儀レヴェランスをした。  どこからともなく拍手喝采が聞こえてきたような気がした。
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