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「対人戦闘って、いったい、何のためにそんな部隊を作っているの?」
美琴が不思議に思うのも無理はない。神月家では念刀を使った戦闘は怨獣相手にしか考えてなく、人間を相手にする技術がそもそもない。
有馬は苦笑した。
「彼らは、冬月家が念刀鍛冶の名家として君臨した歴史の陰に潜む者だ。ともかく歴代の冬月家当主はこの部隊を使って、才能ある念刀鍛冶を潰してきたし、時の権力者のために敵対する勢力の暗殺なども引き受けてきた」
有馬が美琴の質問に答えながら、東上をちらっと見た。
「いやだなぁ、有馬さん。僕は理空翔君を狙ったりしないですよ」
東上がいきなり弁解したので、理空翔は驚いて東上の顔を見た。その様子を見て、有馬が教えてくれた。
「理空翔君、実は影空も三ツ影の一人なんだ。しかも実力は三ツ影一と言われている」
それを聞いて、理空翔は少し引き気味になった。先ほどの白影とのやり取りをみても、東上がただ者ではないと思っていた。それでもまさか、自分を斬りに来た部隊の一員とは想像もしなかった。それほど、東上の物腰は柔らかく、明るい雰囲気は人を傷つけることをまったく連想させない。
「三ツ影って周りが勝手にそう言ってるだけで、ボクは御屋形様に従う気はありませんよ。東京に来たのだって、あの怨獣の王が欲しがるほどの天才念刀鍛冶がいると聞いたので、会いに来ただけですよ」
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