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子供のように必死になって誤解だと言い張る東上の姿に、理空翔はつい気を許して笑ってしまった。周りを見ると、その場の者はみんな警戒を解いていた。一番警戒していた有馬さえついには顔が綻んだ。
「仕方ない、お前の話を信じるよ。しかし、影空は相変わらずやることが無茶苦茶だな。自分が始末を命じられた相手と仲良くするなんて。真堂様に知られたら困るんじゃないか」
「御屋形様はもういいよ。別に破門されてもボクはもう困らない」
あくまでもひょうひょうとした態度を崩さない影空に、有馬も心配するのをやめたようだ。
「では、今日の本題を話そう。先日成田に三人のイタリア人が降り立った。おそらく、バチカンが差し向けた刺客と思われる」
バチカンの刺客と聞いて、理空翔は俄かに緊張した。有馬が差し出した三人の顔写真を見て、狙われていることを実感したからだ。
「奥村さんの話は本当だったのね」
美琴はそう言いながら残念そうな顔をした。確かに、外国から刺客を送られるなんて、三ツ影以上に想像し難い。
「怨獣の王が、海外の念刀鍛冶にとっても警戒すべき相手だということだ」
有馬がもっと恐ろしい言葉を口にした。
璃空翔の顔色が変わった。
「そうですよね。ボクたちは冬月とかバチカンとか、気にしてはいられないはずなんだ」
暗い顔の璃空翔に東上が声をかける。
「ボクは協力するよ。冬月家やバチカンの手から君を守って、一緒に怨獣の王と戦う」
心配ばかりが頭の中を駆け巡る中で、東上の言葉は妙に璃空翔を元気づけた。
「影空だけじゃない。俺も一緒に戦う。まずは中野のあいつを何とかしよう」
有馬は力強く共闘を宣言し、亜紀に目配せした。
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