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「あ……」
足に力が入らなくなり、ガクンとくずおれる。
だが、完全に座り込んでしまう前に力強い腕がティアリーゼの体を受け止めた。
「大丈夫か?」
「ストラ、様……」
神に受け止めてもらうなど畏れ多いと思う反面、労わるように抱きとめてくれるストラに胸がキュンとした。
「ティアリーゼ、様?……っ!」
目覚めたばかりでぼんやりしていたエリーだったが、ティアリーゼの姿を見た途端驚愕の表情になる。
体を起こそうとしてうまく行かなかったのか、肘をつき上半身だけ僅かに上げた体勢で声を上げた。
「ティアリーゼ様! 申し訳ありません!」
「エリー? どうしたんだいきなり。ティアリーゼ様とは……」
フロント氏が娘に近付き支える。
その表情には戸惑いが溢れていた。
「父さん? どうして……いえ、まずは謝罪を!」
状況が分からないながらも謝罪をしようとするエリーだったが、正直ティアリーゼには対応出来る余裕がない。
慣れない治療をしたせいだろうか。
体に力が入らず、頭痛までしてきた。
「ティアリーゼ様! 私、あなたを貶める手助けをしてしまいました。ですが本意ではないのです!」
「待て」
必死に伝えようとしてくるエリーをストラが片手を上げて制止する。
「ティアリーゼは慣れない治療で疲弊している。休ませてくれ。……そちらも状況を把握する時間が必要だろう?」
淡々としたストラの言葉に、フロント氏が一先ず落ち着きを取り戻した。
「そうですね。客間に案内させます」
ベルを鳴らし人を呼んだフロント氏は、ティアリーゼに向き直る。
そして深々と頭を下げた。
「娘を治療してくださり、ありがとうございました」
「いえ……目覚めて良かったです」
このまま話をして協力を取り付けるつもりだったが、どんどん強くなる頭痛にそれもままならない。
ストラの言う通り休息が必要だった。
何とか笑みを浮かべて応えると、ストラがティアリーゼの体を抱き直す。
耳元に唇を寄せ、囁いた。
「今は何も考えず休め。……よく、頑張ったな」
「ストラ様……」
いたわりの言葉に胸が温かくなる。
ストラに褒められたことが、他の誰に言われるよりも嬉しい。
頭が痛くて意識も朦朧とする中、ティアリーゼは喜びを胸に意識を手放した。
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