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「全てはティアリーゼ様に罪を擦り付けるため。メラニー様の自作自演です……しかも、ご自分は飲まず私が毒見をしたということにして無理矢理飲ませたのです」
「何だと? メラニー……自作自演などこの者の虚言なのだろう?」
「そ、そうよ! 嘘を言わないで!」
まだ嘘をつき通そうとするメラニーに、エリーは怒りを押し殺し淡々と話す。
「噓ではありません。メラニー様、あなたは私があのまま目覚めず死ぬと思っていたのでしょう? だからこの度の計画を話した」
「っ!」
「ですが私はティアリーゼ様に助けてもらいこうして目覚めることが出来ました。……メラニー様、騎士団へ話は通しております。じっくりと調べて頂きましょう」
「このっ! 平民のくせにっ!」
エリーに追い詰められ、メラニーは言い返すことが出来なくなったのだろう。
可愛らしい顔を醜く歪ませて、彼女はエリーを黙らせようと手を振り上げた。
だが――。
「させないわ!」
大事な証人に手出しをさせるわけにはいかない。
サッとエリーをかばうように前に出たティアリーゼは、神術で風を起こしメラニーに叩きつけた。
「きゃあ!」
とはいえ聖霊力は抑えたので軽く転ぶ程度だ。
みっともなく床に尻もちをついたメラニーにフリッツが寄り添いキッと睨み上げた。
だが、その表情は驚きに変わる。
神術の風によって、ティアリーゼの全身を覆っていたローブがめくり上がりその下に着ている神官の衣が見えたからだろう。
「なっ⁉ ティアリーゼ、その格好は⁉」
驚愕の声を上げたのはフリッツではなく父である公爵だ。
知らせるのは後にしようと思ったが、見られてしまっては隠す意味はないだろう。
ティアリーゼはローブを外し、微笑みを浮かべた。
「この格好ですか? 見ての通り神官の衣です。私、念願の神官になったのですよ?」
「なっ⁉ ななな」
驚きと怒りで言葉も出ないらしい。
ティアリーゼの父・ベルンハルト公爵とはどこまでも貴族らしい人物だ。
だから貴族として生まれたティアリーゼにも貴族令嬢の義務として政略結婚を推し進めた。
王妃よりも神官としての適性が強かったにもかかわらず、だ。
そんな人物だからこそ、貴族である娘が神官になるというのは許せないことなのだろう。
ティアリーゼとて貴族としての責任はあると思い、今までは望みを抑えただひたすらその義務のため頑張って来た。
だが、そんな自分は捨てられてしまったのだ。
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