0人が本棚に入れています
本棚に追加
大学のサークルの同級生の6人。アラサー(31~33ぐらい)
半年に1度くらいの頻度で飲み会を開催。
高山:元サークル会長。人の相談にのっては、人の弱みを把握するのが趣味。
松田:飲み会ではサラダを取り分けるタイプ。空気読む。体力はない。
小林:貯金が趣味。でも積み立てNISAはよくわからない。
三村:美容オタク。ネイル完璧。SNSのフォロワー数が多い。
吉元:元気がいい。大皿に残った最後のから揚げも、躊躇なく食べる。
熊田:お独り様で焼肉食べれるタイプ。
(30代女子が集まった飲み会の席)
高山:はーい、みんなグラス来たね?
じゃあ、改めまして、久しぶりのアラサー女子会、
カンパーイ!
(松田を除く全員:カンパーイ!)
高山:今日はさ、せっかくこうしてみんな集まったんだから
それぞれ近況報告をよろしく!
…ほら、彼氏ができたとか、結婚するとか、
浮いた話のひとつやふたつやみっつぐらい…
なんかあるでしょうよ、ねぇ。
(小林・三村・吉元:もごもご口ごもるアドリブ)
高山:…え?ないの?一人も?
いやいや、いい歳したオトナ女子が揃いも揃って、
全滅とは情けない。
小林:…そういえば、まっちゃんが遅れるって連絡来てたけど、
どうしたんだろうね。
高山:うん。飲み会とあらば、全力疾走してくるような子なのに…。
松田:(全力疾走してきた息で)はぁ、はぁ…おまたせー!
高山:おぉ!ほんとに走ってきたの?
小林:まっちゃん、おつかれー!
吉元:先に始めてたよ。何飲む?
松田:(息を切らしながら)
ねぇ、それより、後ろ、誰か追ってきてない?
三村:何?ストーカー?
松田:ううん。違う。
ただの女同士の飲み会を「女子会」と言い換えたり、
30歳を超えてても「女子」って自称したり、
29歳までは「20代」って胸張って言ってたのに、
30歳を超えたとたん「30代」と言わず「アラサー」って
言い始めて年齢を曖昧にしたりしてることを、
「若さに固執しててイタイ」とか「勘違いオバサン乙」なんて、
わざわざ口に出して指摘してくるメンドクサイ男!
…追ってきてない!?
(小林・三村・吉元:怖がるアドリブ)
高山:は?何そいつ!
「女子会」とか「アラサー」って言葉は、
すでに日常的な用語として一般的に市民権得てるし、
共通の認識として、楽だから使ってるだけなのに?
松田:使うたびになんか思われてるんじゃないかなって、
いちいち気にするようになっちゃって、ホント、怖い。
高山:わかる!こっちは全然そんなつもりじゃないのにねー!
小林・三村・吉元:こわーい!
吉元:いや、まぁ、今のとこ追ってきてる奴はいないから、大丈夫だよ。
ほら、まずは飲んで、忘れよっ。
(店員に向かって)すみませーん、注文いいですかー!
高山:でも、この歳になっても怖いものってあるよね。
ねぇ、コバちゃんは?怖いものある?
小林:え?私?うーん。
「私が仕事から疲れて帰ってきたときに、
家でご飯を作っててくれる彼氏」っていう存在が、
そもそも空想上の生き物だった、
って事実に最近気づいてしまったのが怖い。
松田:まって、空想上の生き物だったの?アレ。
小林:もはやファンタジーの域でしょ。
ツチノコレベルで賞金かかってても、おかしくないよ。
高山:どおりで探してもゲットできないはずだよ!!
松田・三村・吉元:こわーい!
高山:みっちゃんはどう?
三村:私、趣味が美容オタクだから、今、切実に老化が怖い。
高山:あぁぁぁあ!アンチエイジング!
三村:お肌の曲がり角って、結構な鋭角でえぐってくよね。
吉元:でも、みっちゃん、20代のときから、全然変わらないよ!
三村:そりゃあ、自分自身に課金してるもの。
吉元:…お直しってこと?
三村:お直しじゃないもん!時を止める魔法だもん!
高山:あぁ、刻一刻と深まるほうれい線!
松田・小林・吉元:こわーい!
高山:そういう、よっしーは?なんか怖いものある?
吉元:うーん、毎月のクレジットカードの請求が怖い。
高山:何買ったの?
吉元:今イチオシのアニメのDVDを特別仕様BOXで大人買い。
高山:おぉ。
吉元:さらに昔、子どもの頃に見ていたアニメが
今になって15周年だとか、20周年で再燃してて…
小林:大人になると、自由になる金があるから、余計に質が悪い。
吉元:地元の同級生は、結婚して出産してる子もいるけど、
ぶっちゃけ子どもを産んで育てるより、
自分を甘やかしてる方が楽しいんじゃないかと思ってしまう。
三村:魔法の言葉☆自分へのご褒美!
吉元:これじゃ恋愛も結婚もできそうもない!
もう誰も私を止められない!
高山:その真っすぐさ、幼女のごとし!
…てか、よっしーの目がマジのやつだ。
松田・小林・三村:こ…こわい!
高山:あっ、くまだっち。
もう、一人で黙って飲んでないでさ、あんたは怖いものある?
熊田:えー、私にはそういうのないよ。
三村:うっそだー!なんか言ってみなって。
熊田:ないってば。
小林:もう、そういうとこだぞ。
みんな言ってるんだから、くまだっちも言ってみなって。
熊田:んー、
「女子会」とか「アラサー」って言葉にこだわるやつらは
上っ面の揚げ足を取りたいだけ。
どうせ向こうもあんたと同じ。中身なんか見てないって。
「仕事から疲れて帰ってきたときに、
ご飯を作ってくれる彼氏がいない」って
そりゃ、それをしてあげたいと思えるだけの魅力が
あんたに無いだけだから。オタガイサマ。
「老化が怖い」っていうのもさ、
この顔面の皮一枚に、どんだけ価値があるのよ。
最後に、お金の使い方が人それぞれなのはいいとしても、
都合よく「自分へのご褒美」って言いつつ、
未来の自分から借金してるだけでしょ。
よくまぁ、そんな話を恥ずかしげもなく喋れるもんだなー
…って思ってるだけで、わざわざ口にする気もなかったけど
一応聞かれたから、答えておくね。
えっと、それで何の話だっけ?
高山・松田・小林・三村・吉元:えー…(ドン引き)。
熊田:あぁ、怖い話ね?うん、私には全然怖いものなんてないよ。
高山:…でもさ、ほら、
恋愛とか仕事とか…何かひとつぐらいはあるでしょう?
ね?ね?
熊田:しつこいなー。そんなものあるわけ…ぶるるっ(震え)
松田:どうしたの?くまだっち?
熊田:うぅっ…怖いもん思いだした…!
吉元:え?怖いもの?なーんだ、やっぱりあるんじゃない!
なになになに?教えてよ!
熊田:やだ。恥ずかしいから言わないっ!
高山:大丈夫よ。みんな、しょうもないものを怖がってたじゃない。
ほら、言ってみなって。
熊田:…笑わない?
高山・松田・小林・三村・吉元:笑わない。
熊田:絶対に?
高山・松田・小林・三村・吉元:笑わない。
熊田:私が席を立った後も?
高山:笑わないし、悪口なんか言わないよ。信じて。
熊田:…じゃあ、言うけど…「おっさん」。
高山・松田・小林・三村・吉元:おっさん…?
熊田:ひぃ!その言葉を聞くだけで怖いっ…!
高山:え?…「おっさん」が?
熊田:ひぃん!(震え)
高山:マジで?
熊田:特にお金持ちで、羽振りが良い、
自慢話も自虐ネタも言わない清潔感のあるおっさんがこわい!
高山:あー…うんうん、わかるよ。
今まで誰にも言えなくて辛かったよね。
ここまで一人で頑張ってきたの、ホントにえらいよ!
松田・小林・三村・吉元:慰めたり、褒めたりするアドリブ
高山:…でね、くまだっち?
…あのさ、すっごく言いづらいんだけど、
ここ…前歯に口紅ついちゃってるから、
化粧室でささっとお化粧直しておいで?ね?
うんうん。はーい、ごゆっくり行ってらっしゃい。
高山:(熊田がトイレに立ったのを見届けてから)
ねー!ちょっと、聞いた?おっさんだって、おっさん!
これってさ、くまだっちに
「おっさん」をぶちかますドッキリを仕掛けたら、
一発ぎゃふんと言わせられるんじゃない?
松田:ドッキリを?
高山:だって「おっさん」って言葉を聞くだけでガタガタ震えてんだよ?
4,5人集めて、おしくらまんじゅうさせてみようよ!
くまだっちを真ん中にしてさ!
おっさんに囲まれたら、あんあん泣いちゃうかもしれないよ!
三村:まんじゅうだけに、アンコで「あんあん」って!
高山:…よし、そうと決まれば、今すぐおっさんを召喚しよう!
誰かおっさんを呼べる人いる?
小林:いや…それはさすがに…。
高山:(誰も呼べる人がいないのを確認して)…だよねぇ。
そもそも、おっさんが怖いって何なのよ。
熊田:(トイレから戻ってくる)おまたせー!
で、どう?金持ちで羽振りのいいおっさんを、私に紹介してくれる…
もとい、私を罠に嵌める手筈は整った?
高山:ま、まさか、そんな罠に嵌めるだなんて…ねぇ?
吉元:そうだよ。あ…あはは…。
熊田:あはは、残念!
これでハイスペックなおっさんハーレムができるかと期待してたのに!
高山・松田・小林・三村・吉元:おっさんハーレム!?
熊田:(ドスを効かせて)そう、ハイスペックなおっさんを
4,5人集めて、おしくらまんじゅうさせたら、
楽しそうだと思わない?ねぇ?
松田:えっ…くまだっち、もしかしてさっきの話を聞いて…
高山:(松田に対して)まっちゃん、しっ!
熊田:…うそうそ、冗談よ。
松田:…なーんだ!もう、びっくりしたー!
熊田:でも、私さ、ときどき思うんだ。
このままじゃ自分がいつかおっさんになってしまうんじゃないかって。
三村:は?待って待って。
おっさんが怖いんじゃなくて、くまだっちがおっさんになるの?
熊田:そう。さっきの話もさ、
私たちが怖がってるモノって、突き詰めれば、
メンドクサイ男や、老化そのモノが怖いんじゃなく、
誰かから批判されたり、晒されて笑われることを
無意識に恐れているんじゃないかなって思うの。
高山:んん?
熊田:私たちが怖がっているものは、第三者からの評価…
「世間の目」だってこと。
小林:ってことは、いわゆる女性の役割を彼氏にも要求したり、
物欲や趣味を優先した結果、婚期が遅れることを不安に感じるのも…?
熊田:自分の価値観に自信が持てず、
世間に対して、どこか後ろめたく思っている自分がいるから。
吉元:うわっ、言われてみれば、そうかも!
松田:それ真理なんじゃない?
熊田:でも、そういう女の役割とか、一般的な価値観に抗い
反発しようとすると、最終的にどうなると思う?
吉元:…え?
熊田:見た目や、中身の女らしさを失い、
周りの目を気にすることなく、社会にのさばる…
高山・松田・小林・三村・吉元:…ごくり。
熊田:まさに、おっさん化してしまうの。
高山:おっさん…?
熊田:自分の価値観に基づき、自分らしい生き方を追求した結果、
おっさん化するアラサー女子。
高山・松田・小林・三村・吉元:おっさんに…?
熊田:おっさんに。…超怖くない?
高山・松田・小林・三村・吉元:こっわ!!!おっさんこわい!!!
(騒ぎ出すアドリブ)
熊田:ねー!怖いよね。
でもさ、あんたらなら、まだまだ大丈夫だと思うわ。
高山:え?なんで?
あ、もしかして私たちの、この成熟した女の魅力で、
おっさん化を防げるとか?
熊田:ううん!人が席を立った後に、その人を笑ったり悪口言うのって、
ザ・女子って感じ!
ほんと、いつまでたっても陰湿な女子中学生根性が抜けないよね!
あーあ、これだから、女って怖い怖い!
最初のコメントを投稿しよう!