ないものに惹かれる人間の性

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「……おれが、信用できない?」 「……」 「大事にするからさ、おれの気持ち受け止めてよ」 「……」 「玲華」 ふたたびわたしをぎゅっと抱きしめる彼に、胸が切なくなる。 あぁ、もう。 わかったわよ。 「……御門くんの気持ち、受け止めてあげる」 「それって」 「認めるわ。あなたのことがすきだって」 「玲華……」 「でも、あなたと一緒にいることで、高校生活に支障を来すなら、そのときは縁を切るから」 「そんなことさせない。おれにも思い当たるところはあるから、期待してよ」 「そう」 「これからよろしく、玲華」 「……えぇ、よろしくね、京輔くん」 そう言うと、彼は一瞬目を丸くしたが、その後またわたしの唇に口づけして、一緒に登校することになった。 うん。 やっぱり、顔がいい男に言い寄られて悪い気はしないわ。 わたしに足りないものを、満たしてくれる感じがする。 自分で思うのも変だけど、こんな女に魅力を感じてしまうなんて、人間の本能って厄介なものね。 おそらく、わたしに自覚がないだけで、何かしらの言動が、御門の琴線に触れてしまったのだと思う。 わたしが、彼の顔に魅力を感じているのと同じように、自分にないものを他人に求めてしまうのが人間だから。 きっとわたしがヒロインのストーリーはつまらない。 でも、隣にいるのが彼なら、少しは楽しくなるのかもしれない。
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