ないものに惹かれる人間の性

「ほんとはおれのことすきでたまらないのが行動見てればわかるから、十分素直だよ」
「……」
「あ、痕、薄くなってる」

わたしの髪をかき分けて首の後ろを見た彼が、また新たに痕を残そうとしてる。

「だ、め。また見られちゃう……」
「前みたいにごまかせば？」

首の後ろに吸い付いた唇が、今度は右側の首筋に移動してくる。

「っ、！　ほかのとこも吸った……」
「あらら。しぶとい虫だね」
「どうしてわたしなの？」
「本能だよ」
「はぁ？」
「おれという不完全な人間を完璧にしてくれるのは、玲華だけ」
「……わたしは」
「意地張ってるのもかわいいけど、もう我慢すんなよ」
「我慢なんか……んっ」

あらゆる言い訳を考えようとして、気がついたら彼に唇を奪われてしまっていた。

ここ、家の前なのに。
時間は、まだ大丈夫だと思うけど。

そもそも、なんで、何がどうして、こうなったんだっけ。