ないものに惹かれる人間の性

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「なぁ」 「……」 「なぁってば」 構わず歩き出すと、その人物もわたしの後をついてきた。混雑を避けたくて、比較的利用の少ないトイレに入ったから、生物室までは、少し遠い。 「なんで話しかけるなって言ったんだ?」 「……」 目的地が同じなのだから仕方ないが、背後の彼にうっとうしさを感じる。 「もう、いい加減にしてよ。あなたと関わることで、自分の高校生活を棒に振りたくないの」 「ふーん?」 いちおう理解してくれたのかと思えば、わたしを後方に引っ張り、そのまま抱き寄せた。 ちょっと、何してくれてんの。 身をよじってひっつく彼を剥がそうとするも、余計に押さえ込まれてしまう。 「やめて。だれかに見られる……」 「だれも見てねえし。てか無理。絶対逃がしてやんねえ」 そう言って、彼はわたしの首の後ろに舌を這わせた。 「っ、やだ。ほんとにやめて」 わたしのささやかな抵抗もむなしく、唇は首元から離れず、しまいにはちゅうと吸いつかれてしまっている。
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