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「……あれ? 委員長?」
その日は放課後まで何事もなく平穏に過ごせていたが、帰り支度をしているわたしの背後を通ったクラスの女子(とりわけわたしに対して敵意を持ってない)が、不思議そうに尋ねてくる。
「なんか、首の後ろ赤いけど……どうしたの?」
「……え」
ついに気がつかれた。
これまでだれもわたしを気にするひとなんていなかったのに。
普段から髪を下ろしていて、首元が見えることはほとんどないが、隙間から見えてしまったのだろう。
「たぶん、虫に刺されたかな?」
「そっかぁ。最近、暑いもんね。わたしも気をつけよう」
「うん。気をつけて」
「じゃあ、委員長、また明日ね」
なんとか平静を装って乗り越えた。そのようすをまだ帰らず隣の席にいた御門がクスクスと笑ってこっちを見てくる。
「ふーん。虫刺され、ね」
「あなたも気をつけた方がいいんじゃないの」
「……」
ついムッとして、口を滑らせてしまったが、失言だったと気づいたときには、彼の表情はさらににやついたものになっていた。
御門が付けたキスマークを“虫刺され”と言ったのだから、つまり、わたしが彼に同じものを付けると捉えられてしまってもおかしくない。
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