待ちわびた雨

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 0  鈍色(にびいろ)のの空からは今にも雨が降りだしそうだ。気が早い私は携帯していた黒い傘を差していた。 あめあめ、ふれふれ、かあさんが じゃのめで おむかえうれしいな  幼いころに何気なく口ずさんだ童謡が、こんなにもせつなく感じるようになるとは思わなかった。  迎えにきてくれる母はもういない。父も。生意気な弟たちも。  十二年前……あの日の雨が私からすべてを奪い去った――少しまえまでは、そう信じていた。
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