0人が本棚に入れています
本棚に追加
2
ハイブリット車で乗りつけた人物が、窓越しに私の名前を呼ぶ。車から降りて迷わず私の傘に近づいてきた。
「東京から帰ってきたっていうのに、こんな場所に呼び出したりしてどうしたんだ?」
不審に思われても仕方がない。市内を見渡せる高さにあっても人も車もほとんど往来がない場所だ。
「伯父さんと二人だけで話したかったの。誰にも知られないように、ね」
私が対峙しているのは母方の伯父・前園浩二だ。似ていない兄妹だと思っていたのに、笑顔だけは亡くなった母のそれを思い出させる。土砂災害で家族と死に別れた私を引き取り、自立するまで面倒を見てくれた恩人だ。
ところが、二年前に私の見方は一変した。
最初のコメントを投稿しよう!