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「本当に地元には戻って来ないのか? 働き口なら俺がいくらでも世話をするよ」
「今の仕事が面白いの。こっちで同じ職に就くのは難しいから」
大学でジャーナリズムを学んだ私は、卒業後は東京の出版社で経験を積んだ。
「ユカちゃんが記者になるとはね。何の週刊誌だったかな? 俺は医療系の仕事に就くものとばかり思っていたよ」
私の父は医師だった。このD町で開業し、患者が来ればどんな相手でも診察する町医者の鑑だった。町一番の大きな病院へと成長したが、銀行からの借り入れが多すぎた。借金は急激に焦げつき、担保にした病院の土地建物が取りあげられてしまったのだ。私たち家族の次の住処となったのが立地条件の悪い貸家――土石流で流されたこの地である。
「俺の家じゃ話しづらいことなのか?」
「自分の悪事を家族に知られたくないでしょう」
「どういう意味だ?」
伯父の問いには直接答えず、私は新たな角度から切り込んだ。
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