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4 パームツリーを行き過ぎて
そんな住宅街は
いつの間にか過ぎてしまい
気がつくと
辺りは、
日本の海岸沿いに
何処にでもありそうな風景になった。
多分、埋め立て地から外れたのだ。
漁村とも農家ともつかない
小さな古い平家がごちゃごちゃした一角の路地に
夏歌はふっと入っていった。
その家の裏庭なのだろう
狭い土に野菜が育てられていて
添木にもたれて不揃いなナスやきゅうりを
成らせていた。
その空き地の向こう側に
先ほどの風景とはかけ離れた
二階建ての古いアパートが建っていた。
夏歌は
そのアパートの
サビついた鉄の外階段を
ヒールの音を響かせて
ゆっくり上がっていった。
既視感…
そして
並んだ部屋の一つのドアを開けた。
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