2 白い花の思い出

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2 白い花の思い出

出会ったのは17年前 俺は入社4年目で 仕事に自信がつきかけた頃だった。 夏歌は同じ会社の派遣社員1年目 言われた仕事を卒なくこなしていた。 目立つ美人というのではないが 目鼻立ちが整っている。 ほっそりした手足の割に ボリュームのある胸や腰が男の目をひいていた。 なんとなく帰りの時間が重なり 食事に誘い 飲みに誘い 休日も会うようになり… いつか、彼女のアパートに週末泊まるようになった。 会社では2人の関係は伏せていた。 社内恋愛禁止ではなかったが 当時はまだ、社内で付き合ったら結婚する というような暗黙のルールがあったのだ。 俺は 夏歌との結婚は 全く考えていなかった。 思えば彼女を口説き落とすまでは ずいぶん熱も上げて いろんなことを言った。 例えば 「ずっとソバにいてほしい」とか 「いつか一緒になりたい」とか そんな意味深な言葉は口にしたが 俺は用心深く《結婚》の2文字は 口に出さないようにしていた。 騙す、という意識もなかったが 彼女のことをはじめから (容姿も学歴も生まれ育ちも 結婚相手には物足りない) そんなふうに思っていたのだ。 当時は今と違って 派遣会社からくる女子社員は 4大卒の本社採用より一段下に見られていたし 同期の男同士でも (派遣の子と遊ぶのはイイけど 捕まっちゃうような下手こくな) というような風潮もあった。
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