2 白い花の思い出

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付き合って3年目の春 俺は28、夏歌は25になっていた。 関係がこのまま続くと 夏歌と結婚しなくてはならないような そんな、見えないプレッシャーを 俺は勝手に感じていた。 丁度、そんな折 転勤辞令の打診があった。 行き先は福岡支社 「分かってるだろうが 福岡へ転勤ということは お前は出世街道に乗ったのだ いや、俺が乗せたんだ あとはお前次第 身綺麗(ミギレイ)にしとけよ」 直属の上司の言葉もあって 俺は転勤したタイミングで 夏歌と連絡を絶った。 彼女は暫く 雨垂れのように連絡をしてきたが 俺はことごとく無視した。 夏歌が泣いたり騒いだりしない性格だと 分かりきっていたからだった。 (そのうちに 捨てられたと悟って諦めるだろう 夏歌だってまだ若い) そんな言い訳を自分にしながら 福岡に行って3ヶ月 ムクゲの咲き出す頃には 夏歌からは沙汰止みになり… 足かけ3年の関係は終わった。 胸が痛まないでもなかったが 赴任地での仕事に忙殺され 彼女の記憶は遠のいていった。 俺は、会社にもバレず 綺麗に逃げおおせた くらいに思っていた。
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