2 白い花の思い出

4/4

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
福岡支社で 俺はガムシャラに成績を上げたものの 2年後本社に戻ると 「潮流」がすっかり変わっていた。 まず、 夏歌は 俺が転勤して2ヶ月後に会社を辞めていた。 俺以外、社内で 誰とも親しくなかった夏歌の その後の消息は不明だった。 可愛がってくれた上司は 主流の派閥から弾き出され 俺が本社に戻るのと入れ違いで 地方の工場に飛ばされた。 工場長として行くなら 東京の本流に戻る線もあるが 肩書きも立場も曖昧で 明らかな左遷だった。 詳しい経緯がわからないが 常務の機嫌を損ねたらしかった。 (この2年、あの上司のために 厄介な仕事も引き受け 恩を売っておいたのに… すっかり無駄骨になるとは) 無駄骨どころか 飛ばされた上司の懐刀だったということが かえってアダになるばかりだ。 (潮目を見直さないと…) 大きな会社で出世するには ただ仕事を真面目にやって 成果を出すだけではダメだ。 やはり大切なのは「本流」に乗ること。 俺は、飛ばされた上司とは離れ 新しい「本流」にそれとなく いや、かなり明白(あからさま)に 近づいていった。 ナリフリなど構っていられなかった。 そう、あの頃 俺には人一倍、野心があった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加