巫女の姉が逃げたので、代わりに雨を降らしに行ってきます

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「私はこの淵に住まう龍神だ。  私が寝ている間に、あのヌシ様とやらがここらを牛耳っておったのよ」 「もしかして、あなたが起きたから、ヌシ様いなくなったとか?」 「……なにを非難がましく言っておる。  あっちが勝手に住み着いておったのだろうが。  どのみち、あれにはなにもできん」  雨を降らせることも、と龍神は言う。 「……そうだったのですか。  お姉様はそのことは?」 「知っていただろうよ。  あれに大したことはできないことくらい」  そうですか、と言ったあとで、ヒナは訊いてみた。 「あの、では、私をあなたの巫女にしてくださいませんか?」  あんなことを言っていたが、龍神なら、雨のひとつも降らせられるのでは、と思ったのだ。
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