巫女の姉が逃げたので、代わりに雨を降らしに行ってきます

23/31
前へ
/31ページ
次へ
「私もあなたと同じ、チカラを失いしモノ。  共に逃げましょう」 「そう。  よくわらからないけど。  あなたもなにか大きなお役目を負っていたのかしら。  ……頑張ったわね」  自らの人生を思い出しながらシノがそう言うと、男は何故だが、ほろりと泣きそうになる。  どこの誰だか知らないが。  何故か長く連れ添ったもののように、共にいると、心安らいだ。 「でも、私は村を見捨てるようなひどい女よ。  いいの?」 「はい。  私も似たようなものですから」  ふふ、とシノは笑う。 「じゃあ、行きましょうか。  旅はひとりより、ふたりの方がいいものね。  ……きっと村は大丈夫。  私よりヒナの方が賢いから」  上手くやるわ、と言い、青年の手をとると、彼は真っ赤になった。 「じゃあ、行きましょう?」 ともう一度、呼びかける。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

515人が本棚に入れています
本棚に追加