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「私もあなたと同じ、チカラを失いしモノ。
共に逃げましょう」
「そう。
よくわらからないけど。
あなたもなにか大きなお役目を負っていたのかしら。
……頑張ったわね」
自らの人生を思い出しながらシノがそう言うと、男は何故だが、ほろりと泣きそうになる。
どこの誰だか知らないが。
何故か長く連れ添ったもののように、共にいると、心安らいだ。
「でも、私は村を見捨てるようなひどい女よ。
いいの?」
「はい。
私も似たようなものですから」
ふふ、とシノは笑う。
「じゃあ、行きましょうか。
旅はひとりより、ふたりの方がいいものね。
……きっと村は大丈夫。
私よりヒナの方が賢いから」
上手くやるわ、と言い、青年の手をとると、彼は真っ赤になった。
「じゃあ、行きましょう?」
ともう一度、呼びかける。
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