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「やだな。
龍神様が遠くを見せてくれたから、わかったんじゃないですか。
そんなことより、嵐が来ます。
物が飛ばないよう、片付けてください」
とヒナが言うと、長老が慌ててみなに知らせに行く。
戸を叩く長老に教えられたみんなは、わっと喜びながら、嵐の対策をはじめた。
義父がヒナの前に歩み寄る。
「無事でよかった、ヒナ」
その言葉に嘘はないようだった。
高度を下げ、その場でゆらゆらと動いている龍神を見上げると、義父はちょっと喜んで言った。
「お前、龍神様の巫女になったのか」
「いいえ」
「……では、イケニエになったのか?」
「いいえ」
「まさか、花嫁にっ?」
なにを持参金につけたらっ、という顔をする義父に、
「違いますよ。
断られたんで」
とヒナは言った。
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