巫女の姉が逃げたので、代わりに雨を降らしに行ってきます

27/31
前へ
/31ページ
次へ
「やだな。  龍神様が遠くを見せてくれたから、わかったんじゃないですか。  そんなことより、嵐が来ます。  物が飛ばないよう、片付けてください」 とヒナが言うと、長老が慌ててみなに知らせに行く。  戸を叩く長老に教えられたみんなは、わっと喜びながら、嵐の対策をはじめた。  義父がヒナの前に歩み寄る。 「無事でよかった、ヒナ」  その言葉に嘘はないようだった。  高度を下げ、その場でゆらゆらと動いている龍神を見上げると、義父はちょっと喜んで言った。 「お前、龍神様の巫女になったのか」 「いいえ」 「……では、イケニエになったのか?」 「いいえ」 「まさか、花嫁にっ?」  なにを持参金につけたらっ、という顔をする義父に、 「違いますよ。  断られたんで」 とヒナは言った。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

516人が本棚に入れています
本棚に追加