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「あなた、ここのヌシ様では?」
「この淵にヌシはもういない」
え? 一体、いつから……?
とヒナは思う。
じゃあ、お姉様は、なんの巫女だったのか――。
「そういえば、ちょくちょく、ここに来ていた赤髪の娘は逃げたようだぞ」
「は?」
男が空中で手を振ると、そこに、森の中を逃げている姉の映像が浮かんだ。
「ここらが潮時よっ。
何処へ行っても、この美貌でなんとかなるわっ」
と一緒に逃げている村の男に言っていた。
顔は可愛らしいが、気弱そうな男だ。
姉に引きずられてきたに違いない。
だが、男は目の前に飛んで現れた小さなカエルに驚くと、ぎゃーっと悲鳴を上げ、姉の手を振りほどいて行ってしまった。
「ちょっとっ。
待ちなさいよっ」
と姉は叫んでいる。
映像はそこで途絶えた。
「……お姉様、見る目がありませんわね」
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