巫女の姉が逃げたので、代わりに雨を降らしに行ってきます

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    その年は梅雨になっても村に雨が降らず。  森も田畑もカラカラに乾いてしまっていた。  村の神様と言われるヌシ様が住む淵には、さすがにまだ水が残っていたが。  量は限りなく少なく。  また、そこから、田畑に水を引こうにも距離がありすぎた。  星の美しい夜。  困り果てた村人たちは長老の家に集まった。  座敷の上座に座る、淵のヌシ様の巫女、シノに向かい、長老が言う。 「シノよ。  お前が人柱となり、この地に雨を降らすのだ」  文明開化の光も届かぬ田舎では、まだ、村人たちはイニシエの因習に囚われたままだった。
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