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「あ、これ、気付いた?」
ムサシさんはイタズラを仕掛ける子供みたいな顔をして、持っていたショップ袋を広げて中身を見せてきた。
僕はヒッと息を飲む。
ピンクのバイブ以外にも、とてもここでは口に出せない大人のおもちゃがぎっしり入っていた。
所々に突起が付いている太い棒状のもの、形は鉄アレイのちっちゃい版みたいな手のひらサイズのもの、どうやって使うのか僕には分からないような道具もある。
どうやらこの人は、見かけによらずエロい人らしい。
道具攻めを僕にして欲しいわけか。
「こんなに沢山、すごいですね」
「こういうのは使ったことある?」
「ないです。なので色々と教えてください」
「そう……初めてね。ますます萌えるなぁ」
ん、と違和感を感じていると、ムサシさんは独り言のようにブツブツ呟き始めた。
「気に入ってもらえるといいな……まずは拘束してから少しずつ脱がしていこう。きっと千紘はいやいやと首を振るだろうね、たまらないなぁ泣かせたくなるなぁ……いいや、妄想はこれくらいにしておこう、後のお楽しみに取っておかなくちゃ」
「あ、あの、ちょっと待ってください」
暴走するムサシさんを止めずにはいられなかった。
「あの、今日って僕がムサシさんのをするんですよね? その……ふぇ、フェラとか」
これは事前に打ち合わせしていたことだった。
キスなし、本番なしで、僕ができる限りムサシさんの要望に応えるというもの。
道具を使用することはもちろん、僕が受け側にされるなんて聞いていない。
ムサシさんは「あぁ、それなんだけど」とこともなげに言った。
「ボクは基本ネコなんだけど、君みたいな真っ白い生き物を見るとついつい汚したくなる性癖があるんだ。怖がらなくていいよ、痛いことは絶対にしないから」
───千紘が嫌なこととか、怖いことは絶対しないです。
昔、僕にそう言ったあの人の優しい笑みが一瞬で思い出された。
あれから身体や唇を誰にも触れさせていないのだと教えたら、彼は笑うかな。
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