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【1】
君を初めて見つけた時、まずいな、と思ったんです。
だって君はあまりにも美しくて、可憐で、きっともう目が離せなくなる。
僕の理想とする男性が目の前に現れて、心臓がバクバクとうるさく鳴って。
一目見た瞬間から、僕の人生は変わりました。
人を好きになるのって、理屈じゃないんだなって分かった瞬間でした。
君はまるで、太陽のような人でした。
*
「……では、朝礼終わります。今日も一日笑顔で頑張りましょう」
ミーティングが終わると、スタッフ達は散らばって各自仕事に取り掛かる。
売れてしまった商品をストックルームから持ってきて店頭に並べたり、PCで昨日の関東店舗の売上げを確認したり。
営業開始時間になると、モール内にオルゴール調のキラキラした音楽が流れ始める。
アルバイトさんが店頭に立って、通り過ぎていくお客様に一礼をしながら挨拶をする。
ここ、『sateenkaari』は20~30代の男女向けのファッションブランドだ。
ファッションだけでなく、家具、生活雑貨、本なども扱っていてライフスタイル提案型のショップになっている。
関東だけでなく、全国に複数店舗持っていて、近々海外にも出店予定である。
この店の店長としてここに飛ばされてきたのは今から二年半前。前は九州のお店にいた。
もうそろそろ異動と言われてもおかしくないけれど、なるべく異動はしたくない。
だって、あの人に会えなくなってしまうから。
「店長、今日お昼一緒にどうすかー?」
デベからのお知らせのプリントを整理していたら、二番手の八代くんに声を掛けられた。
八代くんは僕の手元を見て焦っていた。
「あーっ、ていうか店長がそんな雑用やってちゃダメじゃないですか! 俺がやりますよ」
「えぇ、いいよ、君がやると余計にめちゃくちゃになるんだもん。これだってほら、角が全然揃ってない」
レジの下からプリントが挟まったファイルを取り出し見せつける。
きちんと揃えて挟まなかったから、はみ出した紙の端が折れ曲がったり敗れたりしている。
「う……そういうの、なんか苦手で」
「君はお客様とのコミュニケーション力はピカイチなのに、細かな作業はてんでダメですね」
「うわぁ、ハッキリ言いますね店長!」
しかしそれは事実だ。
手先が不器用なのか、たまにこういうところがある。
しかし会話を楽しむという能力は人一倍長けていると思う。押し付けがましくない、けれど購買意欲をそそるような言い回し、提案。
商品についての知識も豊富だし、八代くん目当てで来る顧客様は僕よりも多い。
その愛嬌のある喋りと顔のお陰で、店の雰囲気も良くなっていると思う。
「苦手だとしても、ちょっとは出来るようにしないと。店長になった時に困りますよ」
「いやー、人には向き不向きがあるんだし、苦手なものは得意な人にやってもらえばいいじゃないすか! 無理にやろうとしても、ストレス溜まるだけだし」
「……君はそういう人でしたね」
ジト目で八代くんを見ると、へへっと笑われた。
考え方は人それぞれ。このフランクな性格が八代くんのいい所なのだろう。
プリントをペラペラめくっていたら、このショッピングモールのチラシが出てきた。
☆SALE☆という文字が大きく載っている。
裏返すと、“新店OPEN!”と書かれていて、見慣れたイタリアンレストランのロゴと外観の写真がすぐに視界に入ってきてドキッとしてしまった。
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