【4】

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 ふと目を覚まし、上に手を伸ばして手探りで眼鏡を探す。けれど見つからないので起き上がると、森下くんがまた肘枕でこっちを見ているのに気付いた。 「おはようー」 「えっ!! あ、おはようございます……」  まさか起きていただなんて。  不意打ち過ぎて心臓がバクバク言っている。眼鏡を掛けて時間を確認すれば、まだ朝の6時前だった。 「早いんですね。朝ごはんは7時半でしょう」 「うん。昨日の店長が可愛くて、ぐっすり眠れなかったんだ。店長の寝顔ずっと見てた」 「忘れてください! 寝顔も、昨日の僕も今すぐ!」  照れてしまい、もう1度布団の中へ潜り込んだ。  耳をそばだてていると、森下くんが上半身を起き上がらせた気配があった。 「そうだよね。忘れた方がいいかな」 「……」 「俺が勝手に突っ走っちゃって。店長の反応見てたら、止まんなくなっちゃった。ごめんね」  そんな、まるで本当に無理やりしたみたいな言い方。  そんなんじゃないのに。  僕は森下くんに触れてもらえて、すごく嬉しかった。  じゃあ、君は?  僕が触れたとしたら、君は嬉しいんだろうか。  同じような気持ちになってもらえる?  僕も上半身を起き上がらせ、同じ目線になる。  決心が鈍る前に、伝えなくては。 「あの……」 「なに?」  いつの間にか提灯型の照明の灯りは落ちていたけど、少しだけ部屋の中に陽が差し込んできている。  完全な暗闇ではないのに、今から言うことを君は受け入れてくれるだろうか。 「……僕も、したらダメでしょうか……昨日、君が僕にしてくれたこと」 「……僕もって」  森下くんは目を瞠った。  一方的に快楽に溺れてしまい、されるだけされて終わりなのは申し訳ない。 「い、いやだったらはっきり言ってください。僕は君と違って、やめろと言われたらちゃんとやめます」 「だからさ」  座ったまま横向きに抱きしめられ、体が彼の方へ傾く。 「やめろとは言ってなかったよ、店長」  そのまま後ろへ押し倒され、お互い横たわって向かい合った。  大きな手で、僕の黒髪を梳いてくれる。それだけでもう充分に愛を感じた。 「俺、嬉しい。そうやって言ってくれただけで反応しちゃったよ」 「……あ」  導かれるように手を引かれ、足の間に持っていかれた。  もう既に軽く兆している。薄い生地の上からだとすぐに分かる。  森下くんはますます笑顔になって、僕にキスの雨を落としてきた。 「触って? ゆっくりでいいから」 「は、はい……」  その膨らみを、言われるがまま撫でさする。  上から下へゆっくりとこすると、それがまた少し大きくなった。  いつ、パンツの中から取り出そうかと悩んでいたら……彼に僕のも同じように手で包まれてしまった。 「──えっ」 「せっかくなら、一緒にしよ」  疑問に思っていたら、あっという間に昨日みたいに上下にこすられてしまった。  またあの快感がゾワゾワと湧き上がってきて、僕の性器も徐々に硬さを帯びていった。 「……んぅ……」  鼻から抜ける声を漏らし、悶える。  僕がしてあげなくちゃならないのに、森下くんの手の動きに敏感になり、自分の手がお留守になってしまう。 「店長の感じてる顔、本当に可愛いよ」  パンツの中に手を突っ込まれ、直に触れられる。  数時間前に射精したというのに、僕のそれはもう張り詰めていた。   「あぁ……っ」 「俺のも、触ってくれる?」  促され、僕も彼のパンツをずり下ろし、中のものを直に握った。  すごく、熱い。  自分の顔も、今手の中にあるものも。  されているリズムに合わせて、僕も同じように手を上下する。  恥ずかしい。  お互いのを触りあっている。朝、旅先で。  昨日の夜まで互いの裸を見たことさえなかったのに。 「あっ……あぁ……っ」  じゅっ、じゅっ、と2人分の卑猥な音がなる。  先端からは透明な液がぷくっと滲み出て、竿を伝ってシーツを汚していく。  眼鏡を外しておくべきだった。  目の前の森下くんが、赤い顔をして僕を優しく見下ろしている。  そんな慈愛に満ちた目に見つめられて、僕は正気でいられない。 「イきそう……?」  そう問われ、僕は涙目でコクコクと首を振る。  森下くんもきっと、限界は近い。 「一緒にイこっか」  手の動きを早められ、欲望の淵へ引き込まれていく。津波のように押し寄せる快楽を、止めることはできなかった。  閃光のように、はじける瞬間。 「──あ……っ! あ……んん……っ」  ぱたぱたと、僕の腹へ白濁が散った。  結局僕の方が先にイッてしまったけれど、互いがちゃんと欲望を解放できたことに安堵した。 「大丈夫?」  はぁはぁと口で呼吸する僕を気遣ってくれる。  僕は改めて、森下くんとここに来れて良かったと思った。
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