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ふと目を覚まし、上に手を伸ばして手探りで眼鏡を探す。けれど見つからないので起き上がると、森下くんがまた肘枕でこっちを見ているのに気付いた。
「おはようー」
「えっ!! あ、おはようございます……」
まさか起きていただなんて。
不意打ち過ぎて心臓がバクバク言っている。眼鏡を掛けて時間を確認すれば、まだ朝の6時前だった。
「早いんですね。朝ごはんは7時半でしょう」
「うん。昨日の店長が可愛くて、ぐっすり眠れなかったんだ。店長の寝顔ずっと見てた」
「忘れてください! 寝顔も、昨日の僕も今すぐ!」
照れてしまい、もう1度布団の中へ潜り込んだ。
耳をそばだてていると、森下くんが上半身を起き上がらせた気配があった。
「そうだよね。忘れた方がいいかな」
「……」
「俺が勝手に突っ走っちゃって。店長の反応見てたら、止まんなくなっちゃった。ごめんね」
そんな、まるで本当に無理やりしたみたいな言い方。
そんなんじゃないのに。
僕は森下くんに触れてもらえて、すごく嬉しかった。
じゃあ、君は?
僕が触れたとしたら、君は嬉しいんだろうか。
同じような気持ちになってもらえる?
僕も上半身を起き上がらせ、同じ目線になる。
決心が鈍る前に、伝えなくては。
「あの……」
「なに?」
いつの間にか提灯型の照明の灯りは落ちていたけど、少しだけ部屋の中に陽が差し込んできている。
完全な暗闇ではないのに、今から言うことを君は受け入れてくれるだろうか。
「……僕も、したらダメでしょうか……昨日、君が僕にしてくれたこと」
「……僕もって」
森下くんは目を瞠った。
一方的に快楽に溺れてしまい、されるだけされて終わりなのは申し訳ない。
「い、いやだったらはっきり言ってください。僕は君と違って、やめろと言われたらちゃんとやめます」
「だからさ」
座ったまま横向きに抱きしめられ、体が彼の方へ傾く。
「やめろとは言ってなかったよ、店長」
そのまま後ろへ押し倒され、お互い横たわって向かい合った。
大きな手で、僕の黒髪を梳いてくれる。それだけでもう充分に愛を感じた。
「俺、嬉しい。そうやって言ってくれただけで反応しちゃったよ」
「……あ」
導かれるように手を引かれ、足の間に持っていかれた。
もう既に軽く兆している。薄い生地の上からだとすぐに分かる。
森下くんはますます笑顔になって、僕にキスの雨を落としてきた。
「触って? ゆっくりでいいから」
「は、はい……」
その膨らみを、言われるがまま撫でさする。
上から下へゆっくりとこすると、それがまた少し大きくなった。
いつ、パンツの中から取り出そうかと悩んでいたら……彼に僕のも同じように手で包まれてしまった。
「──えっ」
「せっかくなら、一緒にしよ」
疑問に思っていたら、あっという間に昨日みたいに上下にこすられてしまった。
またあの快感がゾワゾワと湧き上がってきて、僕の性器も徐々に硬さを帯びていった。
「……んぅ……」
鼻から抜ける声を漏らし、悶える。
僕がしてあげなくちゃならないのに、森下くんの手の動きに敏感になり、自分の手がお留守になってしまう。
「店長の感じてる顔、本当に可愛いよ」
パンツの中に手を突っ込まれ、直に触れられる。
数時間前に射精したというのに、僕のそれはもう張り詰めていた。
「あぁ……っ」
「俺のも、触ってくれる?」
促され、僕も彼のパンツをずり下ろし、中のものを直に握った。
すごく、熱い。
自分の顔も、今手の中にあるものも。
されているリズムに合わせて、僕も同じように手を上下する。
恥ずかしい。
お互いのを触りあっている。朝、旅先で。
昨日の夜まで互いの裸を見たことさえなかったのに。
「あっ……あぁ……っ」
じゅっ、じゅっ、と2人分の卑猥な音がなる。
先端からは透明な液がぷくっと滲み出て、竿を伝ってシーツを汚していく。
眼鏡を外しておくべきだった。
目の前の森下くんが、赤い顔をして僕を優しく見下ろしている。
そんな慈愛に満ちた目に見つめられて、僕は正気でいられない。
「イきそう……?」
そう問われ、僕は涙目でコクコクと首を振る。
森下くんもきっと、限界は近い。
「一緒にイこっか」
手の動きを早められ、欲望の淵へ引き込まれていく。津波のように押し寄せる快楽を、止めることはできなかった。
閃光のように、はじける瞬間。
「──あ……っ! あ……んん……っ」
ぱたぱたと、僕の腹へ白濁が散った。
結局僕の方が先にイッてしまったけれど、互いがちゃんと欲望を解放できたことに安堵した。
「大丈夫?」
はぁはぁと口で呼吸する僕を気遣ってくれる。
僕は改めて、森下くんとここに来れて良かったと思った。
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