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ご生誕祭、前日
仁科蒼真 視点
明日、5月2日は長い人類の歴史上、もっとも尊い日だ。
僕の妻であり、僕の聖女、僕の女神、そして僕のお姫様である藤子さんが、この世にお生まれになったご生誕日。
つまりご生誕祭だ!!
わっしょい、どっこい、せいやっさ!
僕はこの日の為に二ヶ月も前から計画を立て、緻密な準備に勤しんできた。
もちろんこれはサプライズなので、藤子さんには決してバレないよう注意していた。
藤子さんは全く気付いた様子がない。
こういう所で、僕のストーカー歴五年のうちに培ったコソコソとした裏行動力が役に立ってしまうのだから、誇るべきか嘆くべきか。恐らく嘆くべきだろう。
とにもかくにも、藤子さんのご生誕祭は日付が変わったその瞬間から藤子さんのご誕生をお祝いし、そして一日中溶けたマシュマロのようにドッロドロに甘やかして差し上げ、心からの愛をお伝えするのが、夫であるこの僕の役目だ。
僕は燃えていた。
ストーカー時代は直接祝って差し上げたくてもできなかった。
せめて藤子さんの気分だけでも上げさせられたらと、藤子さんが拾えるように一万円札や高級ハンカチーフなどを道端に落としてみたことがあった。
だが、聖女のように清らかな心を持つ藤子さんは、拾いはしたが『ひひひ…。くすねたろ』と懐に入れてしまうような人ではなかった。
きちんと交番に持って行っちゃう人だったのだ。
あぁ…、いと誠実。いと健気…。
と僕はあの時感動して涙まで流していたが。
結果的に何もして差し上げられなかった自分の情けなさに悔しい思いをしていた。
あの時と比べれば、夫という立場を最大限に利用して藤子さんのご生誕日を直接祝ってあげられる現実の、なんと幸せなことか。
藤子さんを想えば無限大に力が漲ってくる…!僕の脳と体力と股間に!
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