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バースデーナイト
蓬田藤子 視点
突然の雨はビックリしたけど、お陰で素敵な出会いがあった。
仲睦まじいご夫婦を見ているとなんだか感動すらして、私と蒼真さんがたくさん年を重ねた未来に想いを馳せてみたりして、とても心地の良い時間だったと思う。
ご夫婦が去った後も暫く東屋でハグし合ったり、ベンチに腰掛けて他愛もない話をしていると雨雲はどこかへ行き始め、再び太陽が出てきたころには夕暮れになっていた。
「次は屋根がある場所なので天気に邪魔される心配はありませんよ」
予約しているというレストランまで運転しながら、蒼真さんは「いくら雲の上で我が物顔で鎮座していらっしゃる雷神様でも、屋根には勝てまい」だとか、ぶつぶつ独り言を言っていて、話の筋はわからなかったけど、ちょっと可愛いと思いながら私は横顔を見ていた。
連れて行ってもらった場所は、街の景色を展望できる丘にあるリッチな雰囲気漂う洋風レストランだった。
その中でも特別席だというテーブルに案内してもらうと、壁ガラスの向こうには輝く夜景が広がっていた。まさに絶景だったので雨が降っていなくて良かったと思った。
お店の雰囲気も店員さんもお料理も、全てが洗礼されていて、シンプルなワンピースを着ているのが忍びない気持ちになる。もしかすると蒼真さんが今朝用意してくれたあのお姫様ドレスの方が場にそぐわうかも。
そんなことを話したら、「大丈夫ですよ。藤子さんは何を着てもお姫様ですから」と相変わらず顔面最強の笑顔で言われてしまったので、不覚にも照れてしまった私は、きっと脳みそが単純な構造なのかもしれない。
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