バースデーナイト

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 助手席から道路の景色を眺めながら、私は先ほどのお会計でのやりとりがどうも気になって考え込んでいた。  クレジットカードでお会計をし、ウェイトレスが領収書を蒼真さんに渡した時。 「あ、それから、例の映像データはあとで指定の宛先に送っておいてください」  蒼真さんが小声で言っていたのだ。 「かしこまりました」と笑顔で返したウェイトレスがその場を去った時、私は蒼真さんに訊いた。 「蒼真さん?例の映像ってなんですか?」 「い、いえ、なんでもないですよ」 「でも映像データって聞こえましたよ?」 「そ、それは、あの、大丈夫ですよ!やましいことはしてません、断じて」  断じてやましいことをしてない人はそんなに焦った素振りはしないと思う。    これは何かあるなと目を細めたら「サプライズなんです」とやけに苦しそうに言うのでそれ以上は詮索しなかったけど…。  なんとなく、お店にお金を渡して隠し撮りをしてたんじゃないかと、そんな気がしてならなかった。  けど、仮にそうだとしても、私を喜ばせようといろいろ計画してくれた今日は何も言いたくない。  本当のことを白状させるのは、誕生日が終わったてからにしよう。  お出かけから帰って来ると、私をソファーに座らせた蒼真さんは、「サプライズなので、め、目隠しをして待っていてくれませんか?」と両手を震わせながら私の目を布で覆った。  何をするのかなとちょっとワクワクしながらそのまま待っていると、だんだん怪しげな息遣いと「なんか、こ、これは、如何わしいプレイみたいじゃないか!?ふぁ…ぁあ…!いやっ!だめだ!真面目にやるんだ!ま、真面目に!」とパチンパチンと頬でも叩いているような音がするので、不信感しかなかったが、暫くしていると静かになり、やがて蒼真さんが何か作業をしている音だけが聞こえていた。
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