1626人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
美しい罪人
仁科蒼真 視点
理性が崩壊し飛びつこうとしたが。
「でもやっぱり、罪人は一度逃げないといけないですよね」
少女のような笑みを浮かべて藤子さんが急に駆け出した。
そうですか!そうですか藤子さん!僕と本格的な逮捕ごっこをしたいのですね!わかりました!わかりましたよ藤子さん!
僕は全力であなたを逮捕しますからね!
そうして僕も立ち上がり、相棒の将軍様と共に美しい罪人を追いかけた。
「藤子さん!逃げても僕が捕まえますよ!」
「怖い~っ」
「怖いなどと言って顔は喜んでいるではないですか!ぼ、僕に逮捕されたいんですね!」
「違います~っ!きゃあっ」
あっさりと僕の腕の中に捕まった甘い香りを放つ罪人の耳元へ「確保」と囁いた僕は、そのまま彼女を担ぎ上げ、取調室という名のベッドルームに連れて行くのだった。
こんな日もあろうかと買っておいたおもちゃの手錠を取り出すと、一時はドン引きしていた藤子さんも「こ、今夜だけならいいですよ…」と自ら両手を差し出してくださったので、警察になりきっていた僕は悶絶するしかなかった。
そうして僕は美しい罪人、藤子さんに数々の取調べを行うのだった。
最初のコメントを投稿しよう!