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それを確信したのは洗面所でのやりとりだった。
ゆっくり降ろされた私は蒼真さんとお揃いの歯ブラシを取ろうと手を伸ばしたのだけど、まるでハヤブサのような速さで伸びてきた蒼真さんの手に先に取られてしまった。
そうして満面の笑みを向けてきたのだ。
「本日は、この僕が藤子さんの白く麗しい歯を磨いて差し上げましょう!」
「えっ!い、いや、いいです。自分でやります」
「そ、そんな…」
ショボーンとした隙に歯ブラシを奪い取り、先手を取られる前に一気に磨いていると、隣から「シャカシャカしたかった…」とそれはそれは残念そうに呟いている。
けど、全力で無視!
「では藤子さん。洗顔は僕にさせてください」
「えっ!?そ、それも結構です」
「な、なんでですか!?僕はあれですよ?あの、泡を、肌への負担を防ぐモコモコの泡を作れますよ!?」
「私だって作れますから。蒼真さん、こういうことは自分でやるのが一番いいんですよ」
優しく宥めるように言うと、蒼真さんは暫く唇をギュッと結んだあと、急に距離を詰めてきた。
「でもですよ藤子さん!」
いつもなら、そうですよね、藤子さんがそうしたいなら、と渋々ながらも身を引くはずの蒼真さんが、今日は妙に頑固だ。
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