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「今日は藤子さんの誕生日ですから、一日中藤子さんをお姫様のように扱って差し上げなければなりません!そういうルールです!」
「…なんですかそのルール」
「知っていますか藤子さん!ヨーロッパの中世のご貴族達は洗顔も歯磨きも着替えも、お風呂でさえも!全てメイドがやってたらしいのですよ!ですので今日はこの僕をメイドだと、いえ、執事だと思って全て任せてください!」
「えー……」
どうしてそういう発想になったんだろう…。
蒼真さんのこといろいろわかってきたと思っていたのに、まだまだ奥の深い人だ。
「あっ!雰囲気が出ませんか?じゃあ燕尾服着ましょうか!?僕、いつでもご令嬢風藤子さんに虐められる執事になれるように、それっぽい燕尾服を買ってありますから!」
そんなのいつの間に買ってたんだと思いつつ、頭の端っこでは令嬢風な私が鞭をバシンバシンと振ってる様子と、それに悦ぶ蒼真さんを想像してしまって、慌てて頭を振った。
なにそれ楽しいかも、なんて思いそうになったことは、気のせい。そう、気のせいだ!
確かに執事に扮した蒼真さんは物凄くかっこいいだろうから見てみたい気もしなくもないけど!
「着なくていいです!とにかく!洗顔も自分でやりますから。蒼真さんは出て行ってください!」
「ああっ藤子さん!」
洗面所の外まで背中を押して追い出し、ドアを閉めようとしたところで「では保湿クリームは僕がっ」と懲りずに提案してくるのを、ドアをバタンと勢いよく締めて遮断した。
やっぱり、今日の蒼真さんは変態具合に気合いが入ってる…。
ようやく静かになった洗面所で、モコモコの泡を作りながら今日はどんな誕生日になるのだろうと、少しばかりの不安と、でも、少しばかりの期待も抱いていた。
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