進む道

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進む道

1ヶ月後、蛭間を共に裏工作に利用していた張本人である山瀬社長は逮捕されたことで、ようやく事件は終焉を迎えた、長らく間、テレビでは今回の事件についてのニュースが止むことはなかった、「吾妻さん、お連れ様がお待ちです」病室のベッドで窓の外を眺めていた吾妻は、看護士の方を振り向くと、病室に入るようにと伝えた、すると、その2分後、病室には鈴木一課長が病室に顔を見せた、「怪我の容態はどうなんだ?」  「わざわざすいません一課長、まだしばらくは松葉杖がないと歩いては駄目だと医師から言われまして」  「そうか、」やがて鈴木は吾妻のベッドの近くに置かれていた椅子に腰かけると、テレビで報道されるニュースに目を傾けた、「今回の事件はお前がいないと真相に辿り着くとは決して叶わなかった、俺はいつでも待っているぞ、お前が刑事として復帰することを、」   「いえ、私はもう」    「今の体制にはお前が必要だ、待っているからな、吾妻、」。 やがて退院の日を終えた、ある日、吾妻は昔家族とよく来ていた大きな公園の広場に来ていた、ゆっくりと広場の景色を眺めながら、しばらく歩き続けていると、やがて遠くのベンチに一人の女性が座る姿が見えた、「突然及びして申し訳ありません吾妻さん、」  「いえ、またお会いするとは矢部さん」 すると吾妻は、ゆっくりと矢部の隣へとベンチに腰掛けた、「あなたが以前から私を追っていたとは気がつきませんでしたよ、フッ、同じジャーナリストだったのに」  「同じ事件の被害者同士なら、何か次に進める筈だと、思ったんです」  矢部はこれまでに見せなかった、険しい表情で吾妻にそう応えた、「唯一私の宝であった娘が、殺されたのは、仕事から帰ってきた日でした。何度も娘から電話が来たんです、何度も何度も、でも、私は仕事を優先して、娘を助けられなかった」   その言葉に吾妻の心は重く受け止められた、思わず悲しさで涙が溢れそうになるのを必死に堪える矢部に、吾妻は公園で楽しく遊んでいる子供と、その子の両親の様子を見ながら、矢部に一言応えた、「だが、緋梨ちゃんを救うことは出来た、」 すると、吾妻はベンチから立ち上がり、その場で背伸びをし始めた、「これから、私はどう生きていけばいいのか、まだよくわかりません、吾妻さんは、これからどうするんです?」 矢部からの問いかけに、吾妻は悩むことなく、矢部の方を振り向いて、すぐに応えた、「今朝、拘置所にいた蛭間が何者かに刺殺された、まだ警察内部には隠された闇が残ってる、進む道はもう決まった、」  そう矢部に話すと、吾妻はベンチから去っていった。
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